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ティツィアーノの「フローラ」は、どうしてこんなに魅力的なのか。

今日は、星の数ほどあるフィレンツェの美術品の中で、栄えある

美女ベスト10(Azu調べ)

に選ばれたこちらの女性をご紹介します!!

ティツィアーノの「フローラ」。絵の中にいるのに、匂わんばかりの色気!

さて、こちらの美女の名前は「フローラ」といいます。

ローマ神話に登場する、花と豊穣の女神さまです(※)。

※彼女はギリシア神話に登場する「クロリス(Cloris)」と同一視され、ローマ名で「フローラ(Flora)」。ギリシア語のCの音はラテン語ではFの発音になることから別名で呼ばれるようになった。古代ローマの詩人オウィディウスの「祭暦」にこの話が登場する。

『フローラ』ティツィアーノ・ヴェチェッリオ, 1515頃, キャンバスに油彩, ウフィツィ美術館(フィレンツェ)

最初に目が行くところは、男性女性で違いそうですが(笑)

きっと男性なら、大きくはだけた衣装の色白の肌から、見えそうで見えない胸元。

チラリズムってやつですね!

女性なら、整った顔立ちと意志の強そうな目元かな。

上半身のアップだけなのでじっくり見なければ

ふ~ん、綺麗だね。

以上!で終わっちゃいそうなところですが、もう少しよく見てみましょう。

フローラの魅力はどこから来るのか?

美人だから?服がはだけてるから?手にお花をもってるから?

タイトルがなければ、誰か綺麗な人の肖像画かな、って感じ。

だけど、その全体から受ける雰囲気、ひとつひとつの特徴、全部合わせると「あぁ、こういうのが色気ってことだな」って要素を全て兼ね備えています。

表情は、ただ美人なだけじゃなくて、強そうな目元に対して優し気な微笑みをたたえた口元

そこからミステリアスな雰囲気が生まれています。

とても高貴なものに思える顔立ちや髪型と、それに対してギリギリまで見せてくれる気前の良さ?笑

それは、ちょっと近寄りやすい雰囲気も醸し出しています。

それから、ふんわりとした揺れ感のある服と、丸みを帯びた女性らしい体型。

ガイド修業時代の学校の先生(ちょっとぽっちゃり体型)いわく

ガイド学校の先生カテリーナ
ガイド学校の先生カテリーナ

この時代に生きてたら私モテモテ♡だったんだけどね~

そんな完璧すぎないところも愛らしい。

それに、手に持ったお花の効果か、それとも柔らかなスベスベの質感の肌の印象か、彼女の姿全体からとてもいい匂いが漂っているような気がしませんか?

彼女の姿がこんなに魅力的なのは、「色気」を感じる要素がたくさん詰め込まれているからなんですね(*´ω`*)

ちなみに、男性が女性色気を感じるキーワードは、

  • 雰囲気
  • スタイル
  • ミステリアス
  • 愛らしさ
  • あえて隠された色気
  • 近寄りやすさ
  • いい匂いがする
  • 揺れ感
  • 曲線

だそうです♡

フローラも、こう言ってます!

主題「フローラ」のエピソード

女神フローラは、もとはニンフ(妖精さん)のクロリス。

彼女の美しさに一目ぼれした西風の神ゼフィロスが、自分の妻にして花を支配する力と、たくさんの植物であふれた庭園を与えます。

旅好きナナミちゃん
旅好きナナミちゃん

あ、この話どこかで聞いた!

そう、ボッティチェリの「春」に登場するあのフローラです!

サンドロ・ボッティチェリ作「春(プリマヴェーラ)」まさに春の喜びが溢れた幸せいっぱいの名画!

ボッティチェリの作品ではすごく清らかなフローラが表現されている一方、ティツィアーノのフローラはものすごく色気がありますねぇ!笑

ボッティチェリのフローラ

『プリマヴェーラ(春)部分>』サンドロ・ボッティチェリ, 1480頃, 板にテンペラ, ウフィツィ美術館(フィレンツェ)

ティツィアーノのフローラ

『フローラ』ティツィアーノ・ヴェチェッリオ, 1515頃, キャンバスに油彩, ウフィツィ美術館(フィレンツェ)

画家のキャラクターで全く別の魅力を持つ二人の女性、面白いでしょ?

最高神ゼウスとその妻に関するこんなエピソード

さて、ローマ神話の主神ユピテル(ギリシア神話における最高神ゼウス)は、女性の力を借りずに知恵と戦いの神ミネルヴァ(アテナ)を自分の頭から産みました(!!)

ミネルヴァ
『知恵と産業を授けるミネルヴァフィレンツェ>』ルカ・ジョルダーノ, 1682-1685, フレスコ, メディチ・リッカルディ宮殿(フィレンツェ)

このことを知った妻ユノー(ヘラ)は。

女神ユノー
女神ユノー

なんてこと…!女の力を借りずに子を産むなんて、まるで妻のわたくしなんて必要ないみたいじゃないの…!!

女神ユノー
女神ユノー

なんとしてもアテナ以上の素晴らしい神を、あの方(ユピテル)の力を借りずに産んでみせるわ!

そこで頼った相手が、この、花を支配する力を持つフローラ。

女神フローラ
女神フローラ

お可哀想に、ユノーさま…きっとわたくしでも女のプライドをこうも傷つけられては、沈んでしまいますわ…

女神フローラ
女神フローラ

本当はダメなんですけど、こちらの強力な秘密の薬草を差し上げます

ユノーはこの薬草の力によって戦いの神マルス(アレス)を一人で産むことができたのでした。

ただし、残念ながら、マルスは同じ戦いの神ではあっても粗野で乱暴者。まぁはっきり言ってすこぶる出来の悪いヤンキーでした。

戦いの神マルス
『戦争の結果』ピーター・パウル・ルーベンス, 1637-1638, キャンバスに油彩, パラティーナ美術館(フィレンツェ)

時には厳しいフローラ

フローラはただ優しくて親しみやすいだけの女神ではありません。

古代ローマで信仰されていたフローラですが、ローマ人たちは自分たちの願い事を叶えてほしいときしかお参りに来ませんでした。

zuzushii

フローラさま、願いを叶えてくだせぇ。

今年も豊作にしてくだせぇ。

金もいっぱいほしいです。

税金を安くしてくだせぇ。

女神フローラ
女神フローラ

残念すぎるわね、この人たち…借金だけしに来る人はあなたたちだって好きじゃないでしょうに

ムッとしたフローラは、ある時ローマの花や植物の成長を止めてしまいます。

さあ、大変。食べ物がない!

これは困ったと、ローマ人たちは大変反省し、フローラに捧げるお祭りを始めました。

これはフロラーリア(Floralia)と呼ばれ、4月28日から5月3日までの間に開催され、みんなで踊り狂う明るくて華々しいお祭りでした。

パントマイムやストリップショーもやっていたそうですよ!

作者ティツィアーノ・ヴェチェッリオはこんな人でした

ティツィアーノ・ヴェッチェッリオ(TIziano Veccellio)は、ヴェネツィア出身の画家。

ティツィアーノ
『自画像』ティツィアーノ・ヴェチェッリオ, 1550-1555, キャンバスに油彩, 絵画館(ベルリン)[Titian, Public domain, via Wikimedia Commons 引用元
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Self-portrait_of_Titian.jpg]

正確な生年は不詳ですが、1480年代に生まれ、1576年までおよそ90歳近くの長寿を全うした人。

ガイド学校の先生カテリーナ
ガイド学校の先生カテリーナ

1475年生まれのミケランジェロとほぼ同時代ね

彼が生きた時代の絵画界は、色彩を重視するヴェネツィア派と、デッサンを重視するフィレンツェ派で大きく特徴が分かれます。

彼の作品は、まさしく「ヴェネツィア派の巨匠」の名にふさわしく、その豊かな色彩が特徴的。

正確なデッサンよりも、流れるような曲線で表したゆるやかな境界線や、鑑賞者を画面に引き込むかのような印象的な主題の主張

彼の作品は、たいてい主役となる人物たちが生き生きと魅力的に描かれていて、逆に背景などは色彩でぼんやりと表現、というものが多数。

空気感まで使って遠近法を追求しようとしたフィレンツェ派のレオナルド・ダ・ヴィンチとは対照的!

ガイド学校の先生カテリーナ
ガイド学校の先生カテリーナ

同時代でライバル的な立場だったミケランジェロは、ティツィアーノの作品を見てその色彩感覚を大絶賛したものの、後に「しかし、デッサンがなっていない」とけなしたというエピソードが残っているわ

とても長生きだったので、初期と晩年では画風は大きく変わりますが、多くの作品に共通している特徴が、特に女性がセクシーで色気たっぷり、魅力的であること。

そう、あの有名な「ウルヴィーノのヴィーナス」も彼の作品です。

『ウルビーノのヴィーナス』ティツィアーノ・ヴェチェッリオ, 1538, キャンバスに油彩, ウフィツィ美術館(フィレンツェ)
料理男子のポールくん
料理男子のポールくん

おおーぅ、これは大好きな作品でーす

やっぱりイタリア人男性だから、こういう表現になったのか。

はたまたパトロンの趣味だったのか。

彼は生前から非常に画家としての評価が高く、常にパトロンに恵まれ、多くの作品を残すことができたのです。

その数、100は下らないとか。

にも関わらず、死の直前に残したセリフが

ティツィアーノ
ティツィアーノ

最近やっと絵の描き方がわかってきた

謙虚なんですねぇ…。
 

ウフィツィ美術館 第一の廊下 ウフィツィ美術館