ただいま、フィレンツェのメディチ・リッカルディ宮殿にてルカ・ジョルダーノの企画展をやっています。ルカ・ジョルダーノってあまり知られてないんですが、知る人ぞ知る後期バロックの巨匠!!その生涯に残した作品数、なんと数千点という恐るべき制作スピードの人です。
バロックっていったら、カラヴァッジョとかルーベンスとかってイメージはあるけど…
そうそう、大体その時代、その作品イメージでいいと思います!
カラヴァッジョやルーベンスは16世紀から17世紀前半にかけての時代に活躍した人たちで、ルカ・ジョルダーノはその少しあとの後期バロックの時代。だからこそ、それらの偉大な先人たちから学んで画風を確立していくことができたんです。
実は、今回の企画展をじっくり見るまで、彼のイメージといえばメディチ・リッカルディ宮殿の『鏡の間』の天井フレスコ画だけ。とても豪華で美しくて、アレゴリー(寓意画)たくさんで謎ときが楽しい作品、ぐらいのイメージだったけど、実際にキャンバス画とか生涯を知ってみるとより楽しめました!
ということで、特に印象的だった作品を紹介します!
- 2023年3月30日(木)~2023年9月5日(火)
- 入場料:13ユーロ
- 開館時間:9:00-19:00(最終入場は)18:00
- 休館日:水曜日
目次
作者ルカ・ジョルダーノ
ルカ・ジョルダーノは、ナポリ出身。
若い頃はスペイン人師匠ホセ・デ・リベーラについて学び、師匠の死去とともにナポリを出てイタリア中を勉強のために旅をしました。
イタリアといえば美術の宝庫。国内はもちろん、ヨーロッパでもそのレベルの高さは非常に有名で、色んな芸術家が修行に来ていたりします。
特に昔から栄えていた都市ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィアには無数の芸術作品が。
ローマと言えばローマ教皇がいるバチカン市国のおひざ元。
歴史の長さもあるけれど、代々の教皇が収集してきた星の数ほどの芸術作品があります。それゆえに集まってきた芸術家もたくさん。それに、有力なローマ貴族が競って建てさせた豪奢な建物や、お金を出して作らせた作品も。
ルカはイタリア中を旅する間に、それは多くの先人たちの作品に触れたことでしょう。
多彩な才能を持つルカ・ジョルダーノ、後期イタリアバロックの巨匠。その人生と代表作企画展1F キャンバス画コーナー
ここはかつてメディチ家が暮らしていた宮殿のうち、かのロレンツォ・イル・マニフィコ(ロレンツォ豪華王)も使っていたと言われる区画です。
ここにはキャンバス画を中心にコレクションが展示されていました。
『アポロンとマルシュアス』
森に住むサテュロス(半人半獣)のマルシュアスは、ある日、縦笛を拾った。吹いてみるととても美しい音色が出て、周りに他のサテュロスやニンフなど、たくさん集まってきてその音楽に聞き入った。しかし、実はこの笛アウロスは女神アテナが作ったもので、吹くときに頬が膨れるのを他の神々に笑われたため腹を立てて「拾った者に災いが降りかかるよう」呪いをかけて捨てたものだった。
マルシュアスが笛の名手であるという噂が音楽の神アポロンの耳に入り、プライドの高いアポロンはマルシュアスに自分と音楽合戦をするよう持ち掛けた。この時、勝者は敗者に何をしてもよいことになっていた。こうしてマルシュアスは笛、アポロンは竪琴で試合をすることになった。
楽器のみの試合では互角ではあったが、途中アポロンが竪琴を逆さに持って演奏して見せ、マルシュアスにも同じことを強要した(当然、笛は逆さにすると演奏できない)。こうしてマルシュアスは試合に負け、木につるされた上、生きたまま皮をはがれるという目に遭った。
(勝敗の判定には他の説もあります)
まず最初に目に飛び込んでくるこの作品!インパクト大です。
そ、そうね、なんかすごく激しい表情…!!こ、これは…???
こちらの作品、タイトルは『アポロンとマルシュアス』。
ギリシア神話に登場する笛の名手サテュロス(半人半獣)のマルシュアスは、音楽の神であるアポロンと勝負をします。結果はもちろんマルシュアスの負け(ギリシア神話では神に勝つのは無理なのです…)。
さて、破れたマルシュアがどのような目にあったかというと…
木につるされた上、生きたまま体の皮をはがれる(!)という、それはそれは辛い目に…
えぇぇ…神さま、エグすぎませんか…
この作品はまさにマルシュアスが右腕の皮をはがれている場面。あまりの痛みに顔をゆがめて叫ぶマルシュアスと、ほほえみを浮かべるアポロンの対比が激しく印象に残ります。
ほんとだ…笑ってるよ…😖…てことは、このアポロンが握ってる赤いマントみたいなものがまさか、皮ということに…
まさしくそのとおり。しかもこぶしでゴリゴリはがしてるし、中の筋肉まで見えてます!!うわぁ~
ドヤ顔ってほどでもないアポロンの顔が、逆にちょっと鳥肌モノですね…サイコパス的というか。
いや、ないわー。神に勝とうとか、無理無理無理!笑
ぐらいな感じですかね。
マルシュアスの後方では別のサティロスが恐怖に顔を引きつらせて見守っています。そのしぐさはマルシュアスの悲鳴が耳に入らないように耳をふさいでいるのか、でもこの残酷な場面から目が離せなくなってしまっているという感じ。
「いやぁぁぁ~!!!」って声が聞こえてきそう…
全体的には主題である二人の部分にはっきりとスポットライトが当てられていて背景とのコントラストがくっきりしていて、「光と影の画家」と呼ばれたカラヴァッジョの影響が強く感じられます。
自画像(1680-92頃)
こちらはルカ・ジョルダーノ自身の自画像。大体50歳前後?の作品とされています。
既に確かな技術と名声を手にし、イタリア内外から注文が殺到して、芸術家としても脂ののった時期。特徴的なかつらと丸いメガネがまさにこの時代特有の流行をとらえています。
とても貫禄があり、まさに「マエストロ」という感じですね!表情はやや厳しくて無愛想な印象を受けますが、実際にはとても機知に富んだ開放的な性格だったそうです。
あーなんか、そのほうがいいかも…!ナポリ人っぽいよね!
『井戸の前のイエスとサマリアの女』
これは新約聖書ヨハネによる福音書4章にあるお話。少し長いのでごくごく簡単に要約すると、以下のような感じです。
イエスと弟子たちはユダヤからガリラヤに向かう途中、シカルというサマリアの町に来た。正午ごろ、弟子たちが食べ物を買うために町に行っている間、イエスは旅に疲れて、井戸のそばに座った。そこに一人のサマリアの女が水を汲みに来たので、イエスは「水を飲ませてください」と言った。
普通、ユダヤ人とサマリア人は交際しないので、サマリアの女は不思議に思ってなぜ自分に頼むのかと聞いた。するとイエスは「もしあなたが神の賜物を知っており、水を飲ませてほしいといったのがだれであるか知っていたならば、自分からその人に頼み、その人はあなたに生きた水を与えたであろう」と答えた。そしてさらに「わたしが与える水を飲むものは決して渇かず、わたしが与える水はその人の内で泉となり、永遠の命に至る水が湧き出る」と言った。そしてさらにサマリアの女には過去に五人の夫がいって、いま連れ添っているのは夫ではないことも言い当てた。
そこでサマリアの女はイエスが預言者であり、キリストであるとわかったので、町に行き人々に「わたしが行ったことをすべて言い当てた人がいます。もしかしたら、この方がメシアかもしれません」と言った。人々はその言葉によってイエスを信じ、イエスは二日間そこに滞在した。そしてさらに多くの人々がイエスの言葉を聞いて信じた。
日本聖書協会『新約聖書』ヨハネによる福音書4:1-42より要約
つまり、このことは、神の福音がユダヤ人世界から異邦人の世界に広がる最初の出来事となったのです。
この作品はとても印象深かったもの。まず、色合いに注目!
ちょっとパステルカラーっぽくて、今までの黒茶色な感じとかコントラストなところがあまりないよね
そうなんです。これはとても珍しい、“持ち運びできる”タイプのフレスコ画なんです。
フレスコ画…?って、なんか壁に描いてあるイメージが…
ですよね。フレスコ画とは、簡単に言うと乾く前の漆喰に顔料をのせて一体化させることで絵を描いていく技法なので、普通は壁に描いてあるんですよね。
もともと壁に描いてあったフレスコ画を外して展示している剥離フレスコ画というものもありますが、この作品はそうではなく、もともと“持ち運びできる”ように描かれたフレスコ画なんです。だから額装もピッタリ!
じゃあ、この額の中には壁がある…ということ…??
そうですね、というかこの絵が壁そのもの?支持体に「籐(または柳などの小枝)」を使っているとのことなので、大きな円形の板状にしたものに漆喰その他をのせ、フレスコ画を作成したということなのでしょう。
大きさも110cmと、かなり大きめなので重さは相当なものだと思われます。
この技法はフィレンツェで生まれ(Giovanni da San Giovanniが編み出したもの)、円形の絵(トンド)もこの町に古くから多く見られるタイプのものなので、典型的なフィレンツェスタイルの作品ということになりますね。
『トゥルヌスを破るアイネイアース』
古代ローマの詩人ウェルギリウスが書いた叙事詩『アエネーイス』の最終巻での話。
主人公アイネイアースはトロイアの王子でヴィーナスの息子。トロイア陥落後、紆余曲折を経てイタリアにたどり着く。彼がイタリアに到着する以前、敵の大将トゥルヌスはラテン人の王の娘と婚約していたが、アイネイアースが来るとその娘は彼と結婚することに決められた。トロイア人を憎む女神ユーノーは、トゥルヌスをそそのかして戦争を始めさせた。
最終的にアイネイアースとトゥルヌスは死を賭けた決闘をし、アイネイアースが優勢になったとき、トゥルヌスは彼に命乞いをして「せめて遺体を家族のもとに返してほしい」と懇願する。一瞬、アイネイアースは迷ったが、トゥルヌスが自分たちトロイ人と同盟して戦ったアルカディア(ギリシア)人パッラスを殺して奪った剣帯を身に着けていることに気づき逆上して彼を殺す。
この作品はもうひとつの『ヴィーナスに癒されるアイネイアース』とともにコルシーニ家の別荘にあったもの。
場面はクライマックス、トゥルヌスを倒したアイネイアースが必死に命乞いをするトゥルヌスを見て一瞬ゆらいだものの、まさにその足をかけた下にかつての戦友パッラスのベルトを発見した瞬間。
一瞬の静止画ですが、まさにこの次の瞬間、怒りに燃えたアイネイアースが剣をふりかざすのであろう緊張感を見事に切り取っています。
アニメとかドラマとかで、「…これは…っ!」とかって走馬灯シーンが流れそうなタイミングだよね!
ハッとしたようなアイネイアースの眼差しと、足蹴にされ、最後の願いを懇願するトゥルヌスの悲痛な表情が対照的です。
ちなみにアイネイアースの左には彼の優勢と明るい未来を示す聖霊が、対してトゥルヌスの方には生の終わりを示して暗闇に沈み込む聖霊が置かれています。
実はこの作品を見たときにすぐにイメージしたのが、こちらのルーベンス作品『戦争の結果』。
こっちも躍動感と勢いのある作品だね…!
この二つは、テーマが似通っていることももちろんですが、全体的な登場人物の動作にとても共通点が見られると思います。
二人の主要人物のポーズは、ルーベンス作品では書を踏みつけ芸術を追いやるマルスのそれで、そのマルスを引き留めようとするヴィーナスは(意図は違えども)ルカ・ジョルダーノのアイネイアースと左後ろの聖霊の関係に、そしてトゥルヌスの右後ろの聖霊はルーベンス作品に登場する両手を上げるエウロパに似ています。
うーん確かに!ルカ・ジョルダーノはこのルーベンスの絵を見ていたの?
それはわからないんです…。このルーベンス作品は、1638年にメディチ家の宮廷画家スステルマンスの注文で描かれたもので、1691年までは彼の手元にありました。その後、メディチ家大公子のフェルディナンドに売られたので、ルカ・ジョルダーノの滞在中、フィレンツェにはずっとあったんですよね。
それに、ルカはメディチ家にも出入りしていた実力派の画家でした。なので彼が見た機会はあったのではと考えられます。
『エジプトへの逃避』
これは聖書のお話で、イエスの誕生を知ってその殺害を企てたヘロデ王から一家が逃げる場面です。
イエスは、ヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムでお生まれになった。そのとき、占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て、行った。「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその方の星を見たので、拝みに来たのです。」
これを聞いて、ヘロデ王は不安を抱いた。
…(中略)…
東方で見た星が先立って進み、ついに幼子のいる場所の上に止まった。学者たちはその星を見て喜びにあふれた。
家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられた。彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。
…(中略)…占星術の学者たちが帰って行くと、主の天使が夢でヨセフに現れて言った。「起きて、子どもとその母親を連れて、エジプトに逃げ、わたしが告げるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが、この子を探し出して殺そうとしている。」
日本聖書協会『新約聖書』マタイによる福音書2:1-15
ヨセフは起きて、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトへ去り、ヘロデが死ぬまでそこにいた。
こちらは、聖書の一場面『エジプトへの逃避』。古くから板絵の裾絵(主要な場面のサブ的に下に描かれる作品)などでもよく見られるテーマです。
でも、印象的だったのはとてもドラマチックに描かれていること…!
これより前の時代にもよく描かれてはいますが、メインの主題として取り上げられるよりも裾絵のイメージが強かったからか、旅行というか移動の一場面という認識だったんですよね。
時代が違うのでもちろん感情表現などは比べられないんですが、例えばジョットの作品はこんな感じ。
うーんおだやかー!
そうなんですよ。そもそも場面的には天使が先回りして逃げなさい、と教えてくれたおかげで事なきを得た、というところで、必死に逃げるというより早めに出発したみたいなイメージなんですよね。
それがルカ・ジョルダーノ作品では非常に緊迫感溢れる場面展開になっていて、幼子イエスを抱えて渡し舟に乗り込むのが不安げなマリアを天使が励ましていて、夫ヨセフが後ろから「さあ早く」と促しているようです。 それでもイエスの上には明るい光が満ちていて、近くで見るとイエスはほんの少し微笑んでいるんです。
でもこんなに明るく照らしちゃったら場所がわかっちゃいそうねー…笑
ですねぇ。そのために天使たちは雲に包まれてる(隠れてる)のかな?
ちなみに同じくバロック(前期)巨匠のカラヴァッジョの同主題の作品はこちら。
なんだか、とても優雅ねー!マリア様は疲れて寝ちゃってるのかな?
そうですね!
タイトルは『エジプトへの逃避途上の休息』なので、まさしく一瞬、ほっと一息つきましょうというタイミング。天使が美しい音楽を奏でてくれて、緊張しっぱなしで疲れ切ったマリア様は寝落ちしてしまうという場面。
カラヴァッジョにしては非常に珍しく、遠景が描き込まれているわずか二つしかない作品の一つ。水辺の植物や、動物も含めた登場人物の穏やかな表情、全体的にとてもゆるやかな空気の流れる作品です。
カラヴァッジョの「イサクの犠牲」”背景”が描かれた貴重な作品!『アタランテとヒッポメネス』
オウィディウスの『変身物語』の話。
アタランテは美しい女狩人でとても足が速かった。年頃になった彼女に多くの求婚者が現れたが、彼女は尊敬する女神アルテミスと同じく処女を守って結婚しないことを望んでいた。そのため、アタランテは求婚者に対し、競争で自分を負かした者となら結婚するが、逆に相手が負けた場合は死ななければならないという条件を出した。
数々の求婚者が負けて死んでいったが、ヒッポメネスは愛と美の女神アフロディーテに加護を願い、勝負を申し込んだ。アフロディーテは3個の黄金のリンゴを授け、競技中にリンゴを転がしてアタランテの気をそらせるようアドバイスした。ヒッポメネスはそれに従い、1個ずつリンゴを転がして見事にアタランテに勝利し、二人は結婚した。ただし、後にこの二人は女神の聖域を穢した罰によりライオンの姿になった。
今回の企画展のパンフレットにもなっているこの作品、実はとても有名なグイド・レーニの同主題の作品があります。
それと比べると、このルカ・ジョルダーノ作品は先ほどの『井戸の前のイエスとサマリアの女』と同じく、籐にフレスコという珍しい技法で描かれている色彩の効果もあってか、ずいぶん印象が変わります。
グイド・レーニの作品は、二人の向いている方向が逆で、動きはあるもののどちらかというとまるでダンスをしているかのように感じるものです。
対してルカ・ジョルダーノ作品は、二人の体の向かっている方向が向かって左方向で、ヒッポメネスの髪は右に向かってなびき、アタランテの青いマントも左方向に走っていたところを急停止したので波のような弧を描いています。
2人の足の角度とか動きとかが同じで、走ってる途中感がすごく伝わるね!
空や木々の描き方も、どことなく風を感じるような雰囲気になっていますね。
そして画面の手前には恐らく戦いに敗れて死んでしまった人たち、後ろには見物者と思われる年老いた人たちや、建物の上にも立っている人がいます。
主役の二人の「動」な感じとこの周辺の「静」な感じとの対比が、ますます中心部分に空気が流れているような疾走感を生み出しているのでしょうね。
企画展2F『鏡の間』
さて、キャンバス画を中心とした1Fの展示室を出て、2Fに上がります。まずは美術館の通常コース、『東方三博士の礼拝』が有名なマギの礼拝堂を通り、宮殿内の様々な家具設えを見学し、最後に『鏡の間』に到着!
ここはまさに、天井一面にルカ・ジョルダーノのフレスコ画が描かれている彼の代表作が見られる場所。内容は中心の『メディチ家礼讃』をはじめ、神話に登場する神々や人物とそのエピソード、そして寓意画など。
今回の企画展では、ルカ・ジョルダーノがこの天井装飾を請けるにあたって制作したキャンバス画が展示されています。そのほとんどがロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵のデニス・マホンコレクションから来たもの。
キャンバス画それぞれもフレスコ画同様すばらしいのですが、今回、最も感動したのはその展示方法です。
フレスコ画全体はとても大きく、大体7m×21mぐらいだと思われます(データが見つからなかったので目視での予想ですが)。
その中を、画面を区切ることなく様々な場面や寓意画が連続して描かれていて(天井に描かれているということもあって)、普段は特に目に付く人物などを中心に鑑賞するということになりがちです。
でも、今回はこのような展示になっていました。
『剛毅』
目の前のキャンバス画からふと目を上げると、その後方にはそれを基に描かれたフレスコ画が!
これはとても興味深かったです。
普段のフレスコ画だけ鑑賞するときだと、この部分の場合、最も目立つ青いマントの『剛毅』と、その左下にいる鹿の皮をかぶった『恐怖』に目が行くのですが、キャンバス画だと間近でじっくり見られるということもあって、その他に描き込まれているものに対しても十分に目が配れるのです。
ほんとだー!少しずつポーズが違ったりはするけど、配置は大体同じだし、見比べると思ったよりたくさん描き込まれてるのがよくわかるね!
『永遠の洞窟』
こちらも同じく、キャンバス画を見ながら実際のフレスコ画を見上げられる角度に設置されています。
この部分は入口のちょうど真正面、つまり一番遠い場所に当たるのですが、実はこの壮大なフレスコ画のスタート地点なんです。
タイトルは『永遠の洞窟』または『人間の始まり』で、時間が主なテーマ。
フレスコ画だとどうしてもその特質上、パステル調の色彩になり、よりくっきりした色合いの方に目が行ってしまうのですが、実は後ろの洞窟の中に時間を司る神クロノスがいたり、登場する神々の足元をヘビがぐるりと囲んで自分自身のしっぽにかみついていたり(切れ目のない円ということで、永遠を表す)。
目の前のキャンバスだと、ゆっくりじっくり細部を観察できるのがいいよね!それと見比べると、フレスコの中にもまた新たな発見があって楽しい♪
…と、こんな感じでこのフロアにある十数枚のキャンバス画は、基本的にそれぞれ対応するフレスコ画とともに眺められるようになっています。
テーマは簡単ではないので読み解くのは少し時間がかかりますが、キャンバス画でしっかり内容を確認してから同じ部分のフレスコ画を見上げると、より理解が深まって面白いと思います。
企画展について
企画展では、フィレンツェ初出展となる作品も含め、およそ50点が展示されています。
中にはロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵のデニス・マホンコレクションやイタリア内外のプライベートコレクションに含まれる、『鏡の間』の準備のために描かれたキャンバス画も。その他、フィレンツェはもちろん、シエナやルッカ、ナポリからも彼の作品が集結しました。
見ごたえ抜群です!!
- 2023年3月30日(木)~2023年9月5日(火)
- 入場料:13ユーロ
- 開館時間:9:00-19:00(最終入場は)18:00
- 休館日:水曜日