フィレンツェの観光ガイドブックには必ずといっていいほど載っている有名なお買い物スポット、サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局(Officina di Santa Maria Novella)!
あっ、知ってる~!日本にもショップ展開されてすごく人気のあるお店だよね!
体の中から癒してくれる製品の良さはもちろん、その由緒正しい歴史を知ると、よりその素晴らしさが感じられますよ♪
目次
サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局とは
フィレンツェの玄関口、サンタ・マリア・ノヴェッラ駅の向かいにはサンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂があります。
というか、最初にできたのは実は教会のほう。起源をたどると、1221年にドメニコ会の修道士たちがこの地にやってきて、ささやかな活動を始めたところからです。
そしてその約50年後、小さな教会を建てることにしたのです。
「ノヴェッラ」とはイタリア語で「新しい」を表す「nuova」から来た言葉。つまり、城壁の外側=新しいエリア、ということを意味しているのよ
世界最古の薬局
13世紀-創業
この頃の教会は今のものからは想像もつかないくらい、小さなサイズのものでした。
修道士たちは教会で祈りを捧げたり、広場で人々にお説教をしたりするかたわら、教会の近くの広大な土地を使って薬草を栽培していました。
そしてこれらの薬草から薬、香油、軟膏などを作り、病気になった修道士の看護をするために使用していました。
つまり、最初は修道士さんたちが自分たちで使うための薬として薬草を栽培していたのが始まり。これが現在のサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局の前身なんです
こうして世界最古の薬局の一つ、サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局が誕生しました。
14世紀-フィレンツェ中に名声が広まる
サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局の名がフィレンツェで有名になったのは、1334年のこと。フィレンツェで最も権力のあった人物の一人、裕福な商人Dardano Acciaioliを治療するための薬を進呈したことで一気に名声が高まりました。
このことに感謝したアッチャイオーリ家は何かお礼をと修道院に伝えたところ、修道院側は「病人のために快適な=病身であっても宗教行事に参加することのできる」礼拝堂を望みます。
それで、アッチャイオーリ家は一家の守護聖人であるサン・ニッコロに捧げられた豪華な礼拝堂を修道院に贈りました。
ちなみにサン・ニッコロとは、「バーリの聖ニコラウス」という聖人で、サンタクロースの元になった人よ~
この場所は、現在の薬局内のメイン販売ホールとして使われています
1381年には、消毒薬としてローズ・ウォーターが既に売られていたことが記録されています。この頃はペスト(黒死病)がヨーロッパ中に猛威を振るい、人口の1/3以上が死亡したとされていて、このローズ・ウォーターもそのときに殺菌・消毒目的で使われていたようです。
ちなみにこのローズ・ウォーター、今でも薬局内で販売されている商品です
カテリーナ・デ・メディチによりイタリア国外へ
16世紀-ヨーロッパへ進出
そして1533年、今度はヨーロッパにその名声を広めることになりました。
この年、メディチ家出身のカテリーナ・デ・メディチ(フランス名カトリーヌ・ド・メディシス)が後のフランス王アンリ2世の元にお輿入れします。
このとき、カテリーナは専属の調香師としてレナート・ビアンコ(フランス名ルネ・ビアンキ)をフランス宮廷に連れて行くのですが、まさにこのタイミングで『王妃の水(Acqua della Regina)』が誕生したと言われています。
この商品も同じく現在も薬局内で販売している香水です
王室御用達の薬局として
17世紀-「王室御用達」の称号を得る
1542年から、薬局は一般販売を開始し、1612年には大公の「Officina Profumo-Farmaceutica(香水調剤薬局)」と公式に認められ、1659年にはメディチ家のフェルディナンド2世より「王室御用達(Fonderia di Sua Altezza Reale)」の称号を授けられました。
1700年代にはすでにインドや中国にも知られ、そして現在ではアメリカ、南アフリカ、台湾、中国そして日本など多くの国にショップ展開をしています。
19世紀-修道院から一般信徒の経営へ
19世紀のナポレオンによる占領下で、修道院の活動が制限された際にもTommaso Valori、Damiano Beniといった修道士のおかげでこの薬局の活動は生き残り、800年の歴史を守って古くから伝わる商品を販売。
このダミアーノ・ベーニ修道士はドミニコ会として最後の薬局長で、薬局の経営権を一般信徒の手に移すことを決定したのよ~
それで彼の甥であるCesare Augusto Stefaniが薬局の財産や商標などをすべて買い取ったの
その後、ステーファニ家による経営が受け継がれてきましたが、現在は、2020年よりイタリアに本拠地を置く投資会社イタルモビリアーレ社の傘下にあります。
サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局フィレンツェ本店の内部の様子
フィレンツェ本店の建物はとても歴史あるもので、建てられたのは恐らく1200年代、それからたくさんの装飾や改築を経て2012年、創業400年記念の際に店内修復工事が行われました。
内部は、本店として全製品を販売しているのでお買い物はもちろん、それぞれの部屋の素晴らしい装飾にもぜひ注目してください!
入り口:季節のデコレーションがお出迎え!
建物自体はすこぶる地味で、入り口はかなり目立ちません。以前に比べるとショーウインドゥのスペースが大きくなったのでわかりやすくはなりましたが、外からの見た目では本当に中にそんな薬局が…?と思わせられるような質素な佇まいです。
とはいえ、入り口近くまで来るとふんわりと花束のような香りが!
そしてエントランスの扉をくぐると、季節のデコレーションがお出迎え。美しい18世紀の廊下がその時期の植物モチーフで華やかに彩られています。
ということで、この先から色々な商品を売っているお部屋が続きます。
サンタ・マリア・ノヴェッラ「薬局」とはいっても、現在は「化粧品店」の方がイメージが近いかも。
並んでいる商品は繊細で上質な、デパートコスメといったイメージです。
お値段帯もデパコスです!
メイン販売ホール(香水、ハンドクリーム、フェイスケア用品など)
このホールは、もとサン・ニッコロ礼拝堂だったスペース。14世紀にアッチャイオーリ家から贈られた部分ですね。
といっても装飾などはその当時のものではなく、17世紀に改築されています。ちなみにもともとの入り口もこちらではなかったので、このタイミングで現在の入り口が作られました。
このスペースで販売されているのは、主に香りとフェイスケア関連の製品。
数十種類に及ぶ香水(オーデコロン)や、ローズ・ウォーター、ハンドクリーム、フェイス用クリーム、オイル、ジェルなどがあります。
「緑の部屋」(石鹸、ボディケア用品、ディフューザーなど)
続いては『緑の部屋』、名前の由来はかつては庭に面していたことから。その昔はここに蒸留用のストーブや、フラスコなどが置かれていたそうです。
現在の装飾は18世紀に施されたもの。入って左手の壁にはドメニコ会の紋章、上方には1612年から薬局長に就任した代々の修道士から、
20世紀のステーファニ家までの肖像画が飾られています。
この部屋に並ぶのは、石鹸とか、
シャワージェルやボディローション、クローゼット用ワックスタブレット、
キャンドル、
ルームディフューザーなど。
ハーブハウス/旧薬房(ローズウォーター、タブレット、リキュールなど)
続いて、紋章側の部屋に進みます。
ここは旧薬房で、1612年から1848年まではここで商品が販売されていました。
フィレンツェ一の大回廊、その名も『サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂の大回廊』に面しています。
実はこの部屋が現在の薬局の中でも最も古い場所。誕生当時はこの部屋こそが「薬局(オフィチーナ)」だったのです!
その昔は回廊側から出入りしていました。現在でもその跡が確認できます。
現在の天井装飾は1700年代のもので、とても豪華な漆喰細工です。スフィンクスやドラゴンなどの空想上の動物や天使、草花の装飾などバリエーション豊かで思わず目が奪われますね!
サイドの壁には備え付けの家具があり、中には昔、薬の調合に使っていた様々な器具が展示してあります。
この部屋に置いてあるのは、リキュール類や
各種クリーム、歯みがき粉、リップクリームなどなど。
旧聖具室(フレスコ装飾)
そしていったん「緑の部屋」に戻って反対側の通路へ。ここを右に行くと、かつての礼拝堂の聖具室(ミサなどで使う道具を納めておく部屋)に行きます。
1612年、ここは倉庫に変えられました。ハーブやバラなどからの蒸留水を保管しておくために使われていたので、「水の部屋」と呼ばれます。
現在は販売用の部屋にはなっていませんが、14世紀のフレスコ画装飾が鑑賞できます。
テーマは『キリストの受難』、最後の晩餐とユダの裏切りから始まり、十字架につけられる前にむち打ちや平手打ちその他の侮辱を受け、処刑、そして十字架降下から復活までの一連の場面が描かれています。
作者はMariotto di Nardo、1385年から1405年の作です。
フィレンツェ本店のお買い物システム
サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局本店のお買い物システムは少し変わっています。
製品が売られているそれぞれの場所でお会計をするのではありません。
一番最初に「これを買います」と申し出た場所で、一枚のカードが渡されます。このカードには買い物情報が登録されていて、薬局内すべての場所でそれぞれこのカードに情報を登録していきます。
途中、免税対象金額155ユーロを超えた場合は、パスポートを提示すると必要な情報もその場で入力してくれます。パスポートは原本でなくても、情報のわかるコピーや写真などでもOk。
一番最後に、お会計の部屋(メイン販売ホールの奥)へ行って、そこで清算と商品の引き換えが行われます。免税対象だった場合は、同時に書類もここでもらいます。
おぉ…知らないと、ちょっと難しいね!
フィレンツェ旅のお土産に
サンタ・マリア・ノヴェッラの製品は、日本でもとても人気があります。
やっぱり日本で買うよりおトクなの?
もちろん、日本国内で買うよりはお手頃だし(ただし為替レートによってはそんなに差が出ないことも)、お会計が155ユーロを超えれば免税もあります。とは言っても、値段を見ずにポンポン買うにはちょっと、、上にも出てきましたが、香水が85ユーロ、ハンドクリームは35ユーロくらい…と値段帯はデパコスレベルなので、やはりバラマキとか義理でのお土産にはちょっと厳しいものがあります。
んんん、確かに大人買いするにはお財布がつらい…。
そこで、購入目的別おすすめアイテムをご紹介します!
購入目的別おすすめアイテム
自分用または身内用に
値段帯はデパコスレベルなので、やはり頑張った自分や、普段頑張ってくれている家族に贈るという用途なら主力商品がいいでしょう。
香水(オーデコロン)もいいですが、コスパという意味では個人的にはボディローションがおすすめ!
身体全体に使わなくても、手や脚、首元など外に出る部分に使うと、いつもお気に入りの香りをまとっている気分。香りの立ち方がとてもエレガントで、ほんのり自分の周りに香る程度なので香水に比べて周囲を困惑させないかも。
自分用なら好みの香りを選ぶといいですが、万人受けするのはローズだと思います。
自宅用に
ルームディフューザーはちょっとお高くて重いので、それよりはクローゼット用ワックスタブレットがいいかも。
こちらも同じくクローゼットを開け閉めするたびにふわりと香っていい気分になります。天然の草花がワックスの中に閉じ込められているので見た目も可愛い♡
香りの持続は2か月程度だと思います。一箱2つ入り。
贈呈用に
それなりに特別な機会での贈り物か、贈る相手がとても大切な人である場合なら、自分用や自宅用の商品でもいいかもしれません。
それよりはもう少し控えめな(笑)お土産なら、以下のどちらかがおすすめです。
①タブレット
これは中身はミンティアのようなタブレットで、薬草由来なので優しい味で、食べると気分がすっきりする感じ。入れ物の缶もレトロクラシックなデザインで可愛らしいし、中身を食べ終わったら常備薬を入れたりしてまた使えます。
一つ8ユーロ、色付きの缶はお砂糖入りで白いものはお砂糖なしです。
②石鹸
香りが色々ありますが、どれもかなり控えめなので好き嫌いは分かれにくいのではと思います。でも使っているときはしっかりと泡立ち、上品な香りもちゃんとします。
種類により価格に差がありますが、大体1つ12~14ユーロ、ヴェッルティーナ(Vellutina)とタバッコ・トスカーノ(Tabacco Toscano)の2種類だけは25ユーロです。
サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局フィレンツェ本店へのアクセス
フィレンツェ本店は、同じ名前のサンタ・マリア・ノヴェッラ(S.M.N.)駅から徒歩5分程度、お隣のサンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂(広場)からは徒歩3分ほど。
が、表の入り口があまり目立たないので、知っていてもうっかり見逃して通り過ぎてしまうことが多々あります!どうぞしっかり注意しながら歩いてくださいね♪
- 住所:Via della Scala, 16 – 50123
- 電話番号:+39 055-216276
- メール:neg.viadellascala@smnovella.com
- 公式サイト:http://www.smnovella.it/
- 営業時間:9:30 ~ 20:00
- 休業日:12月25日・26日・1月1日