イタリアは歴史の古い街が多く、あちらこちらにその断片が刻まれています。
ところどころで見かけるこのような石碑もそのひとつ。
上の写真の一部、下の石碑部分に「MDCCCXCV」と刻まれていますが、これはいわゆる「ローマ数字」というものです。
ちなみに、普通の「1,2,3,…」という数字の名前は「アラビア数字」よ
一見、複雑そうに見えるローマ数字ですが、読み方の規則は結構シンプル!一度覚えれば、石碑や彫刻に刻まれた年代が読めて、あちこちで役に立つ…かもしれません。
目次
ローマ数字の読み方と表記ルール
読み方
ローマ数字は7種類のアルファベットを使って表します。
M | 1000 |
D | 500 |
C | 100 |
L | 50 |
X | 10 |
V | 5 |
I | 1 |
いくつか、時計でもおなじみの数字がありますね。
あっ、そういえば…5のところにV、10のところにX、その他もその組み合わせっぽい…
表記ルール
左から、大きな数字の順に
表記ルールは、基本的に左から順に大きな数字を並べます。
例えば、「1555」と書きたかったら「MDLV」となります。
一つのアルファベットは一つの数字なので、I, X, C, Mについては、必要な数だけ並べます。
つまり、「2000」なら「MM」、「30」なら「XXX」という感じ。
ということで、例えば「1237」なら「MCCXXXVII」となります。
M(1000)がひとつ、C(100)が2つで200、X(10)が3つで30、V(5)がひとつで5,I(1)が2つで2…あわせて1237になるってことか!
4と9のつく数字は注意
でも、たまにこの順序が左右入れ替わっていることがあります。
例えば「MCMLXXXIX」と書かれているとき。
C(100)<M(1000)なのに2つ目のMより先に出てきてるし、I(1)<X(10)なのに一番最後にXがある…
こういう場合は、「引き算」であることを表します。
M=1000
CM=1000-100=900
L=50
XXX=30
IX=10-1=9
つまり、MCMLXXXIX=1000+(1000-100)+50+30+(10-1)で「1989」と読むわけですね!
なるほど~…ちょっと複雑だけど、理屈はシンプルなのね~
これが起こるのは主に「4」や「9」がつく数字のときです。
「1~3」「6~8」については必要なだけ文字を並べることが多いですが、「4」と「9」は上記の引き算表記が利用されていることが多いです。
たぶん、文字が3つで既にごちゃごちゃしてるから、4つ以上並べると読みにくいから…?
時計の文字盤など、「4」を「IIII」と表記する例もあります。また、年代で「400」は「CCCC」と書かれることもよくあります。
ここまでのルールは基本的なもので、時代や場所によって別の文字や記号が追加されている場合もあります。
実際のローマ数字使用例
それでは、実際に使用されているローマ数字の例を見てみましょう!
読めるかどうか、チャレンジしてみてください!
問題1:フィレンツェの共和国(レプッブリカ)広場
先ほど出てきたこちらは、フィレンツェの街の中心部、共和国(レプッブリカ)広場にある大きなアーチに掲げられた数字です。
さて、「MDCCCXCV」の読み方は?
答えは「1895」。このアーチが完成した年です。
問題2:ラファエロが滞在した家
こちらは、ウルビーノ出身のラファエロ・サンツィオがフィレンツェで滞在した家につけてある石碑です。年代は「MDV」。
この家はタッデオ・タッデイのもので、ラファエロの才能を高く評価していたためゲストとして自分の物件に住まわせてあげたのでした。ラファエロは彼に2枚の板絵作品(『ベルヴェデーレの聖母』『棕櫚のある聖家族像』)を寄贈したとされています。
答えは「1505」。ちなみに全体の文章は「1505年、ラファエッロ・ダ・ウルビーノがタッデオ・ディ・フランチェスコ・タッデイによりこの家に招待された」と書いてあります。
問題3:シニョーリア広場にある石碑
こちらは、ドメニコ会の修道僧サヴォナローラがこの場所で火刑に処されたことを示す石碑です。
世紀末のフィレンツェはサヴォナローラの支配下に…ボッティチェリにも影響!さて、年代は「MCCCCXCVIII」いつのことだったのでしょうか。
答えは「1498」。全体の文は「同胞(同じ信心会に属する信者の意)フラ・ドメニコ・ブォンヴィチーニ及びフラ・シルヴェストロ・マルッフィとともにフラ・ジローラモ・サヴォナローラが1498年の5月23日不当な判決により絞首刑に処されてから400年後、この場所にこの記念碑が設置された」と書いてあります。
問題4:シモーネ・マルティーニ作『受胎告知』
こちらは、シエナの国際ゴシック様式を代表する作品、シモーネ・マルティーニの『受胎告知』です。天使がいきなり登場し(天使のマントがひるがえっているのでまさに着地した瞬間)、驚き怖がる聖母マリアの表情や、細かく描き込まれた天使の服のアラベスク模様が印象的な作品です。
シモーネ・マルティーニ『受胎告知』豪華絢爛なゴシック美術の極み。この作品の外枠をよく見るとローマ数字「MCCCXXXIII」の表記が。さて、何年でしょう?
答えは「1333」年。シモーネ・マルティーニが義弟リッポ・メンミと共にこの作品を仕上げた年で、作者の署名入りというこの時代にしては珍しい作品です。
問題5:ギルランダイオ作『東方三博士の礼拝』
こちらは、ミケランジェロの師匠ドメニコ・ギルランダイオの作品で、題材は救世主イエスが誕生したことを知ってお祝いとお参りにかけつける三人の賢者を描いたものです。
この人は緻密な絵を描くことで有名で、この文字の部分もはっきりと読めるように書いてあるし、大勢の登場人物の衣服や鎧、背景の元神殿らしき廃墟、その向こうに見える港の風景など、写実的な表現が見事です。
さて、描き込まれている「MCCCCLXXXVII」の読み方は?
答えは「1487」年です。この作品は恐らく当時のフィレンツェの有力な一族であるトルナブォーニ家の長男であるジョヴァンニ・トルナブォーニの誕生を記念して制作されたもので、注文主である父ロレンツォ・トルナブォーニの肖像が、画面右端手前の黒い長髪に青紫の衣服を身に着けた男性として描かれていると考えられています。
問題6:ラファエロ・サンツィオ作『聖母の結婚』
こちらはミラノのブレラ絵画館にあるラファエロ作『聖母の結婚』。後ろのローマ神殿風の建物にラファエロのサインと「MDIIII」とあります。これは簡単かな?
答えは「1504」。生まれ故郷ウルビーノの近くのチッタ・ディ・カステッロという街のサン・フランチェスコ教会のために描かれたものです。師匠ペルジーノが20年ほど前にバチカンのシスティーナ礼拝堂に描いた『聖ペテロへの鍵の授与』によく似た構図ですが、右下で怒りのあまり枝を折っている若者の存在など、ラファエロが自分らしい表現に踏み出しつつある作品です。
全部読めましたか?
観光中に、「ローマ数字」を見つけたら、チャレンジしてみてください!きっと、その作品が完成した年か、建造物が完成した年か、誰か有名な人がそこに住んでいた年か、事件が起こった年か…
ありゃ…年代が読めても、可能性たくさんあるね…
そうですね、、でも何かがあった年代だということが示されているので、後でゆっくり調べてみてください。笑