1月26日、聖ザノビの日。その奇跡の伝説にまつわる歴史行事。

ドゥオモ広場 聖ザノビが奇跡を起こしたとされるその場所に建てられた柱

2000年以上の歴史を誇る古都フィレンツェでは、毎月のように歴史上の出来事にまつわる行事があります。

例えば、起源を15世紀にさかのぼる1月6日のエピファニアの行列や、5月23日のドメニコ会修道士サヴォナローラの命日を記憶する日など。

1月26日は、フィレンツェの聖人聖ザノビ(San Zanobi)の奇跡にまつわる日です。

聖ザノビとは

西暦4~5世紀に生きた、カトリックの聖人

聖ザノビ(San Zanobi)とは、カトリックの聖人で西暦4世紀から5世紀にかけて生きていた人。
フィレンツェで生まれ、カトリックの教育を受けて司教になりました。

 

Azu

ちなみに「聖人」とは死後につけられる称号なので、当時は普通の「ザノビさん」、または「ザノビ司教」です

 

▶『聖人』ってダレ??

カトリックの有名な「聖人」たち。そのエピソード、アトリビュートを知って美術を楽しもう!

 

聖ザノビが生きた時代はキリスト教を信じることを認められた(313年)直後でした。それまではキリスト教は異教として迫害されていたのです。

当時はイタリアだけでなく、ヨーロッパ世界はたくさんの民族が勢力を広げようと争っていた時代。

フィレンツェも例外ではなく、406年のゴート族の侵入に代表されるように、度々異民族の侵略を受け、苦しんでいました。

 

聖ザノビは、聖職者としての立場から市民たちを支え、励まし、結果的にはこの時は自由を取り戻しました。

聖人に囲まれる聖ザノビ(中央玉座) ドメニコ・ギルランダイオ, 1482-85頃 ヴェッキオ宮殿百合の間, フィレンツェ

聖人に囲まれる聖ザノビ(中央玉座)
ドメニコ・ギルランダイオ, 1482-85頃
ヴェッキオ宮殿百合の間, フィレンツェ

 

ミラノの聖アンブロージョと交流

聖ザノビの名前が有名なのは、ミラノの守護聖人聖アンブロージョ(Sant’Ambrogio)がフィレンツェを訪れた際に知り合い、一緒にフィレンツェで最も古い教会のひとつ、サン・ロレンツォ教会を奉献したためです。

 

イタリア人ガイドマーク先輩

守護聖人は街ごとに定められていて、フィレンツェの守護聖人は洗礼者ヨハネ(サン・ジョヴァンニ、San Giovanni)だぞ!

 
ちなみにミラノの聖アンブロージョは四大教会博士のひとりです。

教会博士とは、

聖人の中でも特に学識にすぐれ、信仰理解において偉大な業績を残した人に送られる称号。

-Wikipedia 「教会博士」より引用

一方、聖ザノビは、いくつかのフィレンツェの教会や司教区を整備することによってキリスト教を布教するのに貢献し、「フィレンツェの教会の父」とされています。

 

聖ザノビの奇跡

聖人のお引越し

さて、そんな聖ザノビにまつわる行事。

彼が亡くなったのは西暦417年から429年の間頃とされています。
亡くなってすぐは、自ら奉献したサン・ロレンツォ教会に葬られていました。

 

イタリア人ガイドマーク先輩

当時はまだ、現在のドゥオモはもちろん、その前身であるサンタ・レパラータ教会も(恐らく)なく、サン・ロレンツォ教会が街の大聖堂だったんだ!

 

9世紀頃、その遺体がサンタ・レパラータ教会に移されることになりました。正式な記録がないので年や理由にはたくさんの仮説がありますが、一説によるとサンタ・レパラータ教会が大聖堂として奉献されることが決まったからではないかとされています。

 

そしてその日が1月26日

 

Azu

なんで日付だけきちんと伝わってるのか、すごい謎。。

 

この寒いさなかに、聖ザノビの遺体をかついだ行列がサン・ロレンツォ教会からサンタ・レパラータ教会へと向かいます。といっても目と鼻の先です。

その途中、サン・ジョヴァンニ洗礼堂の少し手前にあった木を通ったときのこと。

真冬だというのに、その木に一斉に花が咲いたというのです。

聖ザノビの移動 リドルフォ・デル・ギルランダイオ, 1516頃 アカデミア美術館, フィレンツェ

聖ザノビの移動
リドルフォ・デル・ギルランダイオ, 1516頃
アカデミア美術館, フィレンツェ

 

これは聖人の起こした奇跡だ!とされ、その後何世紀にもわたって言い伝えられているというわけです。

 

※サン・ジョヴァンニ洗礼堂は現在の姿になったのは11世紀以降なので、当時はもう少し規模が小さかったと思われます。また、

歴史学者

当時は異教の神マルスに捧げられていた神殿だった

という人もいます。
 

ちなみにこの木はフィレンツェにある別のサン・ジョヴァンニーノ・デイ・カヴァリエーリ教会(Chiesa di San Giovannino dei Cavallieri)で保管されているそうです。

ドゥオモに移された後

聖ザノビの遺体(というかすでに骨)は、現在もドゥオモの主祭壇のさらに奥のサン・ザノビ礼拝堂。

ここにある棺、サン・ジョヴァンニ洗礼堂の「天国の門」の作者ロレンツォ・ギベルティによる作品におさめられています。

 

現在のサン・ジョヴァンニ広場

その花が咲いた木があったとされる場所には、現在、柱が建てられており、毎年この日には時代行列がここに向かい、柱のふもとには花が置かれます。

 

聖ザノビの柱のふもとにお花が出現!

 

そして続いて旗手によるショー。

この広場に到着すると、やはり一番に目に飛び込んでくるのが大きな建造物、サン・ジョヴァンニ洗礼堂豪華なドゥオモのファサード、そしてクーポラ

 

IMG_6731

サン・ジョヴァンニ洗礼堂、ドゥオモ、クーポラ 聖ザノビの柱は…どこ!?

 

どうしてもこの柱はさりげなさすぎて思わず通り過ぎてしまいます。

 

でも、広場の通り道に突然こんな柱が出現するわけ、フィレンツェを訪れることがあってもし通りかかったら、

 

あぁ、そういえばなんか聖人が奇跡を起こしたんだったな~

 

って思い出してみてくださいね。

 

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