ミケランジェロが惚れた!天国の門@フィレンツェの洗礼堂

      2017/02/10

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フィレンツェの中心にあるサン・ジョヴァンニ洗礼堂

映画インフェルノのロケ地としても使われた、とても有名な観光地です。

トム・ハンクスフェリシティ・ジョーンズも通り抜けた(ことになっている)

この洗礼堂の中で最も美しい扉は、通称「天国の門」と呼ばれます。

なぜ「天国」なのか?

巨匠ミケランジェロもうならせた、ルネサンス最高傑作のひとつの見どころに迫りましょう。

「天国の門」と呼ばれるフィレンツェの洗礼堂東扉

サン・ジョヴァンニ洗礼堂は八角形をした11世紀の建物で、扉は3か所。

「天国の門」と呼ばれるのは、このうちドゥオモの真正面にある東側の扉です。

製作者はロレンツォ・ギベルティ、1425年から1452年まで、約30年近くかけて仕上げました。

\じゃん/

サン・ジョヴァンニ洗礼堂 「天国の門」

サン・ジョヴァンニ洗礼堂
「天国の門」

\ずん/

「天国の門」アップ

「天国の門」アップ

 

\ばばーん/

天国の門をさらにアップ!

天国の門をさらにアップ!

近くでみると、なんと神々しい金色の扉…!

でもこれ、実はレプリカです。

本物はドゥオモをはさんで反対側にある、ドゥオモ付属博物館に保存してあります。

しかしレプリカとはいえ、その出来栄えは見事。

この扉が「天国の門」と呼ばれるのは、いくつか説があります。

ヴァザーリ先生の記録による、ミケランジェロがそう呼んだという説。
②この場所がドゥオモの正面に位置し、洗礼を受けた人がこの扉から出ると、天国にもっとも近い神の家(=ドゥオモ)に入ることができるため。「天国への扉」のようなニュアンスですね。
③昔々、この扉とドゥオモの間にも墓地があったため。

どの説もユニークですが、やはり実物を見るとその名前に納得せざるを得ません。

 

作者ギベルティと仲間たちのアイデアとテクニック

この扉の作者は、ロレンツォ・ギベルティといいます。

15世紀前半に活躍した芸術家で、主にオラフォ(彫金師)として活躍していました。

実は彼はこの作品に取り掛かる2年ほど前に北扉を完成させていました。

そして、フィレンツェ市民からこの栄誉ある扉の制作をまかされたギベルティは、考えたのです。

ギベルティ
前の扉は一番古い南扉の様式をまねて作ったけど、正直この形、もう流行遅れなんだよなぁ~

 

そこで彼は、大胆な変更にチャレンジします!

まず第一にパネルの数を変更。

他の2つの扉が28枚なのに対し、この扉だけは10枚のパネルで構成されています。

イタリア人ガイド マーク先輩
いまでも、洗礼堂の内側から見ると、もとの計画はもっとパネル数が多かったのがわかるぞ!OK?

「天国の門」の裏側

 

しかし、注文主から依頼された扉のテーマは「旧約聖書の物語」。

たった10枚では、表現できる場面が限られてしまいます。

ギベルティ
どうしたもんか…

そこで彼は、彫刻家仲間のドナテッロに相談をもちかけました。

ギベルティ
というわけで、なんかいいアイデアある?
ドナテッロ
簡単っすよ!1枚のパネルにいっぱい話を盛り込んだらいいじゃないっすか!
ギベルティ
…???
ドナテッロ
遠近法を使うんすよ!僕、こないだやってみたんすけど、浅浮き彫りって方法を開発しまして。これを使って奥の方と手前の方で高さ変えて彫り出したら、別のシーンってわかるじゃないっすか
ギベルティ
!!!!!!!!

 

というわけで、仕上がったのがこんな感じ。

\じゃじゃーん/

「創世記」のシーン

「創世記」のシーン

この場面は旧約聖書のうち、「創世記」を表しています。

①神がアダムを作り、②アダムの肋骨からイブを作り、③彼らはある日蛇にそそのかされて禁じられていた知恵の実を食べてしまい、④楽園から追い出されてしまう…

そんなシーンがこの90cm四方のパネルの中に、高さを変えて彫り込まれています。

ちゃんと、それぞれ別のシーンなんだなってわかりますよね。

こんな感じで、他のパネルも、1枚につき複数の場面が盛り込まれ、それぞれのストーリーが表されています。

jacobbe

アブラハムの物語

 

↓こちらは、少年ダヴィデがゴリアテを倒すお話。

la-scena-di-david

ダヴィデの物語

 

ギベルティ
ドナテッロ、すげぇ。。マジ、天才…!

天国の門のアナザーストーリー

さて実は、「天国の門」にはアナザーストーリーがあります。

その前に、洗礼堂の扉の役割とそれぞれの扉のデザインのお話を簡単に。

洗礼堂の扉の役割と、デザインのお話

一番最初に作られたのは南側の扉。

この扉の役割は、洗礼を受ける赤ちゃんと、その親が入るための扉。

1336年完成のアンドレア・ピサーノの作品で、内容は「洗礼者ヨハネの生涯」がメインです。
次に作られたのは、北側の扉。

この扉は、洗礼を授ける聖職者が入るための扉。

1423年完成で、作者は「天国の門」と同じくロレンツォ・ギベルティ、

デザインの内容は「イエスの生涯」。
そして東側の扉が1452年完成、テーマは「旧約聖書」です。

ここは、洗礼を受け終わった人が出るための扉でした。
扉の役割の意味をそれぞれ考えると、実は北扉と東扉の内容はミスマッチなんです。

旅好き女子ナナミちゃん
???よくわからない・・・

北扉は本来、これから洗礼を授ける聖職者が入るための扉…ならばここに置かれるべきは「旧約聖書」の物語。

イタリア人ガイド マーク先輩
聖職者>洗礼を受ける人の立場になるからだよ!OK?
イタリア人ガイド マーク先輩
聖職者=イエス以前の神々の世界、洗礼を受ける人=イエス以降の人間の世界、とイメージしてくれたらいいよ!OK?

そして、出ていくための扉は「イエスの物語」がふさわしいはず。

 

イタリア人ガイド マーク先輩
なぜなら、洗礼を受けたことによって、キリスト教徒として神の子イエスと同じ道を歩み始めたからさ!OK?
旅好き女子ナナミちゃん
ふむふむ、でもどうして役割と内容が一致してないの?

 

実は、現在の北扉は完成当時は東側に置かれていました

ですが、最後の扉(本来は北扉になるはずだった)が出来上がったとき、

あまりの出来栄えの素晴らしさに感嘆したフィレンツェ市民たちは、

最も栄誉ある東側に置くことにしたのです。

イタリア人ガイド マーク先輩
東側はドゥオモの真正面だから、一番価値が高い場所と考えられていたんだ!OK?
もと東にあった扉は北へ、一番新しいものを東へ

もと東にあった扉は北へ、一番新しいものを東へ

結果、扉の役割とテーマの内容にミスマッチが生じることになったのでした。

でもたしかに、他の2枚の扉と比べて圧倒的に出来がいいですから、

華やかなドゥオモの正面に置かれるのがいちばんバランスがいいですね。

 

そしてミケランジェロは習得した

その出来栄えのあまりの素晴らしさを一目見たミケランジェロは息を飲み、

ミケランジェロ
なんと美しい…これこそ天国の門だ…

と称賛したそうです。

絵画より建築より、彫刻を最も崇高な芸術と考えた彼にとって、

この息を飲むほどの美しさは惹きつけられずにはいられなかったのです。

ミケランジェロ
いずれ、このスタイルを作品の中に…!

そう考えたミケランジェロは、その計画を32歳のときに果たします。

 

その作品は、いまもウフィツィ美術館の「ミケランジェロの間」で

世界中のファンを惹きつけている、「トンド・ドーニ」。

トンド・ドーニ

トンド・ドーニ
ミケランジェロ・ブォナロッティ, 1507(?)頃
ウフィツィ美術館, フィレンツェ

 

旅好き女子ナナミちゃん
どこらへんが「天国の門」と一緒なの??

注目ポイントは、実は絵ではありません。

イタリア人ガイド マーク先輩
その秘密は周りだよ!絵の外側をゆっくり見てごらん!
トンド・ドーニの額縁

トンド・ドーニの額縁

旅好き女子ナナミちゃん
おぉっ!!!

 

この作品の素晴らしいところは、その絵の構成や出来栄えももちろんなんですが、

額縁も注目ポイントなんです。
この額縁は絵に合わせて巨匠自らデザインし、贔屓のオラフォに彫らせたという気合の入った作品。
天国の門を見てインスピレーションを刺激されたミケランジェロ、特にこだわったのはココ。

 

これは、ちょうどギベルティが「天国の門」で表現した、

自画像を含む同時代の芸術家の肖像をイメージして作られています。

自画像

自画像
ロレンツォ・ギベルティ, 1452
「天国の門」, フィレンツェ

一番上が聖家族を見下ろすキリスト、

真ん中の段の二人は預言者、

一番下の二人は巫女を表しています。

イタリア人ガイド マーク先輩
これらの人物が、聖家族あるいは鑑賞者に視線を投げかけている様子が、「天国の門」のギベルティの作品とそっくりだろ?OK?

 

「天国の扉」オリジナルはドゥオモ付属博物館で!

天国の門(「天国の扉」とも呼ばれます)オリジナルはドゥオモ付属博物館で、

当時のファサード(ドゥオモの正面)を再現した空間に置かれています。

また、この他にも以前、ドゥオモや洗礼堂に置かれていた作品など、

フィレンツェの至高の芸術品が多数楽しめます!

ミケランジェロの未完の「ピエタ」もあります。

ドゥオモ付属博物館 / Museo dell’Opera del Duomo
住所: Piazza del Duomo, 9
営業時間:毎日 9:00-20:00
休館日:なし(1月1日は休館。詳細は公式サイトにて確認)
◎チケット:サン・ジョヴァンニ洗礼堂、クーポラ、ジョットの鐘楼、サンタ・レパラータ教会遺跡5施設共通券で15ユーロ(最初の入場から48時間有効)※2016年12月21日~2017年3月21日まで特別料金10ユーロ
◎フィレンツェカード対象施設

 

この記事を書いた人
フィレンツェの観光ガイド、Azuです。
初めてイタリアを訪れて以来、すっかり魅せられ毎年旅行するうちについに住んでしまい、観光ガイドに… ⇒詳しいプロフィールはこちら
得意ジャンルは美術、観光、ワイン。好きな芸術家は、ブロンズィーノ。既にフィレンツェファンの方も、イタリアのどこ?何があるの?な方も、一緒に楽しみましょう♪
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