フィレンツェのシンボルといえば、『ブルネレスキのクーポラ』。
クーポラとは円屋根の建築物を差し、英語ではドームと呼ばれます。

ちなみにブルネレスキというのは15世紀イタリアを代表する建築家の名前で、このクーポラの設計者だぞ!
さて、コロンとした半球の形が愛らしいクーポラですが、ただかわいいだけじゃありません!今から約600年も前に設計されたこのクーポラのどこがすごいか、どこに注目するとより味わい深いのか、ご紹介します!
目次
フィレンツェのクーポラ、まずはプロフィール!

『ブルネレスキのクーポラ』は建築当時、世界最大の建造物だったと言われています。
そして21世紀の現代に至るまで、世界有数の巨大建築であり、クーポラだけで見るといまだに世界最大級のサイズを誇っています。
まずは、そのプロフィールを見てみましょう。
| 建築時期 | 1420年 – 1436年(頭頂ランタン部除く) |
| 設計者 | Filippo Brunelleschi (1377-1446) |
| サイズ | 直径(内側/外側) :45.5メートル/54.8メートル 高さ(地面から頭頂部まで):116メートル 高さ(クーポラ部分のみ) :35.26メートル |
| 素材 | 基礎部分:ピエトラフォルテ 内部:レンガ、大理石、鉄、鉛、木材など |

使用されたレンガの数は400万個、そして重さは総計28,000トンと言われているぞ!!
直径45.5m…ちょっと想像してみましょう!
この長さは、サッカーの国際試合用のコートのゴールラインの3分の2ぐらいで、日本の国内線の飛行機の機体とほぼ同じくらいのサイズになるそうです。

けっこう・・・長いね!!
フィレンツェのクーポラのすごいポイント!
さて、そんな大きなクーポラですが、ただ大きいだけじゃない!
建築構造的に様々な工夫が凝らされていて、これが約600年前に発案されたと考えるとより驚き!なすごさの秘密をさらにご紹介します。
クーポラのすごさの秘密①支えなしに建っている

クーポラのすごさその①!内側にも外側にも支える構造がない!
実はクーポラは、内部がガランとした空洞になっています。つまり、梁がなくて、天井を支えるものが一切ないっていう状態なんですね。
さらに、ゴシック建築によくある外から壁を支えるバットレス(控え壁)という部分もありません。

クーポラ自体は八つの面が組み合わされて建てられているのですが、その八つの面が、頂上を頂点としてお互いに支え合っているという構造になっています。

あの大きな直径でしかも重い石を積んでできていることを考えると、上からガラガラと崩れることなく、支えなしに重力に反してその姿を維持しているというのは実にすごいことなんです!
クーポラのすごさの秘密②重力を分散する仕組み

クーポラのすごさその②!実は二重構造になっている!
クーポラは、外側からは茶色、内側からはフレスコ画の壁が見えます。実はこの外側と内側、一枚の壁になっているわけではなくて、外側から見えている茶色(レンガ色)の部分、そして内側のフレスコ画の部分の間には、空洞があります。
この空洞があることによって、上からかかる重力が分散する構造になっています。もし一枚物の壁だったとしたら、直径がこんなに大きいものなので、重力に引っ張られて崩れ落ちてしまうということがあり得るんです。

ブルネレスキはそうならないように、二重構造にすることによって重力を分散して負担を少なくしています。
基本的には内側の壁が自立して支えるための構造で、外側の壁との間は厚さ2m以上の木枠がそれをつないでいます。

この間の空洞を利用して階段が設置され、建築途中に利用されていました。これを使って現在でも頂上に到達することができるわけですね!
そして、実は壁には、外側にも内側にもいくつか穴が開いています。

外側の穴は空洞部の採光のため、内側は換気のために開けられているそうです。

すごい!実はたくさんの場所に、いろんな工夫がされてるんだねー!!
クーポラのすごさの秘密③建築素材を固定する工夫

クーポラのすごさその③!建築素材が動かないよう工夫してある!
クーポラの内部は、主な木枠や鉄素材の他はレンガや大理石といった素材で構成されていますが、壁の部分は主にレンガが使われています。
もし、石をそのまま普通に積み重ねていくと…、

もしかしたらうまく積めていないとか、うまく接着していないとか、そういったことがあるとレンガが滑ってしまう可能性があります。 ブルネレスキはそれを避けるために、ある一定の間隔で横向きのレンガと縦向きのレンガを組み合わせて積む工法を考案しました。
こうすることによって、つっかえになるレンガが一定間隔で入っていますので、完全に滑って崩れてしまうということがありません。これは、表面を見ると、魚の骨のような構造をしているので、そのものずばり『魚の骨』という名前で呼ばれています。


ヘリンボーンってやつだね!!

以上、クーポラの設計にあたってのいろいろな工夫をご紹介してきました。

ブルネレスキは、このクーポラ設計前にローマを旅して古代建築を研究し尽くしたんだ!勉強の成果が随所に活かされていて、改めて素晴らしい!!
ということで、クーポラの建築をめぐる様々なエピソードをご紹介します!
クーポラの建築当時のエピソード
エピソード①建築前のコンクール
このクーポラを建築するに際し、設計者を決めるコンクールが開かれました。最終的に現在の案で優勝したのはブルネレスキですが、実はクーポラ自体が建築された15世紀以前に、すでにアイデアとしては出てきていたんです。
こちらは、サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂の中にあるスペイン人礼拝堂のフレスコ画です。

ここには、完成後の大聖堂によく似た姿が描かれています。でも、このフレスコ画が描かれた時点(1365年~1367年)では、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂はまだ本体の建築中でした。この当時の人たちはこのクーポラが付いた大聖堂の姿を見たわけではないんですよね。
そもそも最初に大聖堂本体を設計したのはArnolfo di Cambio(1245頃 – 1302/1310)という建築家ですが、実はこの人の案から設計図は変更(拡大)されており、十字架の交差部のクーポラをどうやって実現するかという部分はあいまいだったようです。大聖堂の建築には長い時間がかかっていて、クーポラの工事をする段階になったときにはアルノルフォはすでに亡くなっていましたし、彼のプランからとりあえず拡大してみたものの当時の技術で実現は不可能と思われていたんです。

大聖堂本体の礎石が置かれたのは1296年9月8日のこと、そしていよいよクーポラ部分の工事という段階になったのはそこから100年以上も経っていたんだ!
それで、いざその部分まで完成した段階で、このクーポラを設計してくれる人、大募集!!というコンクールが開かれることになりました。そこに応募した人の中にいたのが、
我らがFilippo Brunelleschiや、

Lorenzo Ghiberti

他、でした。
実はこの二人、因縁の再対決だったんです。クーポラ建築のさらに二十年前、1401年のこと、大聖堂正面に建つサン・ジョヴァンニ洗礼堂の扉の制作者を決めるコンクールで、ブルネレスキはギベルティに惜敗していたのでした。
この扉のコンクールで敗れたブルネレスキは、親友ドナテッロを伴ってローマへの傷心旅行へと旅立ちました。ブルネレスキはそこでパンテオンやコロッセオなど、当時ローマに残っていた古代建築を隅から隅まで研究し尽くして、その結果を生かしてのクーポラコンクール見事優勝!となったのでした。


同行した親友のドナテッロは、初期ルネサンスを代表する天才建築家!!
彼もまた、ローマで古代美術をしっかり学んで、自らの技術にどんどん活かしたぞ!
エピソード②高所の作業はどうやって?

この時代、こんな高い建物を作るのってどうやってやったんだろう…?
…って思いますよね。実は『クレーン』がすでにあったんです!


なんと…!すごく見覚えのある形かも…!
これらの機械・工具はドゥオモの後ろにある大聖堂美術館というところに収められているんですけれども、この時代に、現代のものと原理そのものはほとんど同じ、クレーンのような建築道具というのが使われていました。
建築現場では、現在でも高いところを修復したり新しい建物を建てたりするときにするのと同じように、足場を組んで作業を行っていました。足場が高くなって、人の力で上げられないような場所になったときには、こういった滑車のついたクレーンなどを使って、作業を行っていました。

といっても、クーポラはかなり高さがあるから、上に行くにつれて滑車のロープを引っ張るのにすごい力が必要になるんだ!そうなると人間の力ではまず難しいので、先に牛をつないで引いてもらっていたんだよ!!
エピソード③職人たちのお昼休憩

現在でもエレベーターがないクーポラですから、工事途中も当然、建築に携わる職人さんたちは毎日徒歩で上がり下りしていたはずですね。
高さが低いうちはまだいいですが、だんだん建物自体の高さが増してくると、上がったり下りたりが辛くなってきます。それに、何度も上がったり下りたりするのは時間をロスしてしまいます。そこで、設計者でもあり現場監督でもあったブルネレスキは、職人や工事従事者に対して色々と厳しい条件を課していました。たとえば…
- 休憩は日に一度のみ。それを超える回数、また通常より長い休憩を取っていた場合は罰金、または数日分の減給。
- 休憩の食事の際のワインは、1/3の水で薄めること。
などなど。

ワイン、薄めればいいんだ…?

というか、この時代はワインの方が安全な飲み物だったんだ!現代のように上下水道が整備されていない時代、水はよく汚染されていて、色々な病原菌の繁殖のもととなることもあったからね!OK?
まあ、でもそれにしてもトイレはどうしてたんでしょうね。気になりますね。
クーポラ内部のフレスコ画に注目!
クーポラは頂上からのフィレンツェ旧市街一望の景色も素晴らしいんですが、登る途中にもあれこれ隠れ注目ポイントがあります。
ひたすら頂上を目指すだけだと、ちょっとした修行で辛いので、登る道中もしっかり満喫していきましょう。とはいえ、基本的に、後ろからどんどん人が来るのであまり立ち止まって休憩したりじっくり鑑賞することはできません。ここぞというポイントでサッと写真を撮ったり観察したりして、流れを詰まらせないように移動しましょう!
フレスコ画のテーマは『最後の審判』

フレスコ画は『最後の審判』というテーマです。
もともと、クーポラに先立って完成していたサン・ジョヴァンニ洗礼堂の天井画も最後の審判をテーマにしたモザイク画で、実はこのクーポラの天井もモザイクで同じように作られる予定でした。
しかしクーポラが1434年に完成してから100年以上、白い壁のままで放置されていたのです。なぜなら、モザイクは高いから!そして、15世紀末から16世紀前半にかけてというのはフィレンツェは動乱の時代でもありました。町の治安が安定していない状態で、とてもクーポラの装飾にお金をかけている状況ではなかったんですね。
それが1568年、フィレンツェの統治者トスカーナ大公であった、メディチ家のコジモ1世により、装飾することが決定されました。コジモ1世はお抱えの総合芸術家Giorgio Vasariに装飾することを指示します。
残念ながらヴァザーリは道半ばで世を去ってしまったので、その後を継いでフェデリコ・ズッカリが中心となって、1579年に完成へと至りました。
さて、最後の審判というのは、聖書の中で『ヨハネの黙示録』『マタイによる福音書』などで示されている話なんですが、キリスト教において、この世が終末を迎えるタイミングで、すべての人が一斉に審判を受けるということになっています。
このとき、死者もお墓から呼び覚まされて、生前のその人の行いによって、天国と地獄(と煉獄)という世界に振り分けられるということになっています。

中心にイエスがいて、イエスの右手は上、左手は下、つまりそれぞれ天国と地獄を指しています。
イエスの周辺には聖母マリアや洗礼者ヨハネ、そしてその他の聖人たちが同じ段に描かれています。もちろん彼らは天国に行く人たち。
逆に、生前の行いが悪かったため、地獄に落とされる人々は、下の方に描かれています。地獄は茶色、黒、赤などのおどろおどろしい色使いです。そしてその中に、巨大な悪魔も描かれています。悪魔の形相もそれは恐ろしいし、生前の行いが悪かった人は、そのまま火に投げ込まれたり、ひどい人は悪魔にそのまま食べられたり、というような様子が描かれています。

特に字が読めなかったり、本を読む習慣のない一般大衆にとっては、具体的な絵でがあることで「いかに地獄が恐ろしいか、そして天国がどれだけ素晴らしいか」というイメージがわきやすかったと思います。
巨大なフレスコ画に登場するもの
このフレスコ画は、全面積が3,600㎡というそれは巨大なもの!
そしてその中には全部で700以上の姿形が描かれています。内訳は、天使が248、霊魂が235、擬人像が21、宗教的人物が102、罪びとが35、人物の肖像画が13、怪物が14,プット―(小さい天使)が23、動物が12だそうです。

クーポラから下りるときに通る通路では、地獄部分のすぐ下を通過します。下から見るとちょうどいい大きさのフレスコ画ですが、間近でみるとその迫力に圧倒されます!眼前に迫る巨大な足、悲壮な顔つきなど、ぜひ忘れずに鑑賞してください。

フレスコ画はふつう、壁や天井に描かれるので至近距離で見ることができるのも貴重なチャンスです。
その他、下からだと小さくしか見えないステンドグラスもしっかり鑑賞しましょう!
それから、登頂時の通路部分の最後は、内側の壁が斜めになっていることで上でお話した二重構造が実感できます。ここまで来たら屋上まであと一息!
屋上に近いエリアでは『魚の骨』も確認できるところが何か所かあるので、観察を忘れずに!
クーポラに入場して楽しもう!
クーポラに入場するためには、チケットが必要です。特にハイシーズンは数週間先まで売り切れのことが多いので、早めの予約がおすすめ!詳しくはこちらの記事をどうぞ。

フィレンツェガイド
Azu
イタリア政府公認観光ガイド。 得意ジャンルは美術、街歩き、ワイン。好きな芸術家は、ブロンズィーノとドナテッロ。有名作品もいいけど、隠れ注目ポイントや裏話が大好き!普通のガイドブックじゃ見つからない、”ここだけの話”をお伝えします♪
