2019年のレオナル・ド・ダヴィンチに続き、今年2020年はルネサンスの巨匠、ラファエロのメモリアル・イヤー!
没後500年に当たる2020年は、各地で偉大な芸術家をたたえる企画展が開催されます。
ということでその生誕&死去の地であり、主な活躍の場だったイタリアで開催される中でも最大級、ローマのラファエロ展「RAFFAELLO 1520-1483」について、期間・場所・出展作品・チケット予約など重要な情報をまとめてお伝えします!
- 期間:2020年3月5日(木)~
2020年6月2日(火)
→期間変更:2020年6月2日(火)~8月30日(日) - 場所:スクデーリエ・デル・クィリナーレ ※クィリナーレ宮殿向かい(ローマ)
- チケット料金:一般17.5ユーロ / オープンチケット22.5ユーロ ほか
- 公式サイト:https://www.scuderiequirinale.it/
目次
夭折した偉大な芸術家、ラファエロ・サンツィオ
聖母子像や天使の絵などを中心に、日本でもとても人気のあるルネサンスの画家、ラファエロ(Raffaello Sanzio / ラファエッロとも※)。
彼は若い頃からその才能を評価され、人付き合いのうまさもあってたくさんの注文を得たので、短い人生の間に信じられないほどの量の仕事をこなしました。
しかしたった37歳という若さで夭折し、しかもその亡くなった日が自分の誕生日でありかつ聖金曜日(=イエスが処刑された日)でもあったことから、次第に神格化されていきます。
そんな彼が亡くなってから、今年2020年はちょうど500周年を迎えます。
※ラファエロは日本語でラファエッロとも表記されますが、
本記事内では「ラファエロ」で表記を統一します。
フィレンツェ人のポールくん
ちょっと言いにくいですね。。
ラファエロ展2020@ローマ
ローマで開催されるラファエロ展、その名も「RAFFAELLO 1520-1483」。コロナウィルスの蔓延により、一時中止されていた企画展ですが、名前もリニューアルして(もとの企画展名はシンプルに「RAFFAELLO」)期間延長となりました!
イタリア内外から200以上(絵画の他にデッサンなども含む)もの作品が集められた大規模な企画展です。
期間は2020年6月~8月の3か月
企画展「RAFFAELLO 1520-1483」の開催期間は、
2020年3月5日(木)~2020年6月2日(火)
→2020年6月2日(火)~8月30日(日)の約3か月間- 期間中、休館日はなし
- 開館時間は日~木:10:00~20:00、 金・土:10:00~22:30
それぞれ最終入場は閉館時間の1時間前
です。
開催場所はローマのスクデーリエ・デル・クィリナーレ
開催場所はスクデーリエ・デル・クィリナーレ(Scuderie del Quirinale)、イタリア共和国大統領官邸でもあるクィリナーレ宮殿の向かいの建物です。
18世紀にローマ教皇の命により建てられた建物で、現在は展覧会や文化イベントなどの際に使われています。
スクデーリエ・デル・クィリナーレのアクセス
スクデーリエ・デル・クィリナーレ(住所:Via Ventiquattro Maggio, 16, 00186 Roma)へのアクセスは以下の通り。
ローマ・テルミニ駅から
- 徒歩で約20分←結構、上り坂あり。
- バス40番(「Borgo Sant’Angelo」行)または64番(「P.ZZA Stazione S.Pietro」行)または170番(「Agricoltura」行)乗車、「Nazionale / Quirinale」下車徒歩6分
- 地下鉄A線「Barberini」駅下車徒歩11分
チケット情報と予約方法
美術展「RAFFAELLO 1520-1483」のチケット料金は以下の通りです。
- オープンチケット(期間中の好きな時に一回入場可能):22.5ユーロ
- 一般:17.5ユーロ
- 18歳~25歳:15.5ユーロ
- 6歳~17歳:2.5ユーロ
- 5歳以下:無料
オンラインの事前予約はこちら。
参考
RAFFAELLO 1520-1483VIVA TICKET
サイトにアクセスし、①英語(ENG)を選択、②チケット種別を選択、③BUYで次の画面へ進みます。
チケット種別例)
オープンチケット:BIGLIETTO OPEN – RAFFAELLO
一般:RAFFAELLO – BIGLIETTO INGRESSO MOSTRA
その後、希望の日付と入場時間を選択すると次の画面で料金一覧が表示されます。
ここでは料金を選ばず、黒いバーのところに表示されている「SIGN IN OR REGISTER」を選択。
既にVIVA TICKETのアカウントを持っている場合はメールアドレスとパスワードでログイン、持っていない場合は新たに登録、そして以下の購入者情報などもすべて埋めて予約を進めます。
出展作品は200以上!
イタリア国内外16の美術館の協力のもと、集められた作品たち。
ここではその一部をご紹介します。
Azu
- Galleria Palatina(パラティーナ美術館・フィレンツェ)
- Gallerie Nazionali d’Arte Antica(国立古典絵画館・ローマ)
- Pinacotea Nazionale di Bologna(国立絵画館・ボローニャ)
- Museo e Real Bosco di Capodimonte(カポディモンテ美術館・ナポリ)
- Museo Archeologico Nazionale di Napoli(国立考古学博物館・ナポリ)
- Fondazione Brescia Musei(ブレシア美術館財団・ブレシア)
- Musei Vaticani(ヴァチカン美術館・ヴァチカン市国)
- musée du Louvre(ルーブル美術館・フランス)
- The National Gallery, London(ナショナルギャラリー・イギリス)
- Museo Nacional del Prado(プラド美術館・スペイン)
- National Gallery of Art(ナショナルギャラリー・アメリカ)
- Albertina Museum Wien(アルベルティーナ美術館・オーストリア)
- British Museum(大英博物館・イギリス)
- Royal Collection Trust(ロイヤルコレクション・イギリス)
- Ashmolean Museum(アシュモレアン博物館・イギリス)
- Palais des Beaux Arts de Lille(リール宮殿美術館・フランス)
『大公の聖母』(パラティーナ美術館所蔵)
世界で最も多くのラファエロ絵画作品を保有するフィレンツェのパラティーナ美術館からは、彼のいちばん有名な作品のひとつ、この『大公の聖母』と次の『ヴェールの貴婦人』が貸し出されます。
幼子イエスを抱きかかえた聖母マリアは眼差しを伏せて、少し憂鬱そうな感じも。我が子の将来の受難を既に知っているからと解釈されています。
この作品は、実は制作された経緯はわかっていません。名前の由来は18世紀終わりから在位していたトスカーナ大公フェルディナンド3世がこの絵を購入後、非常に気に入って常に自分とともに移動させたことからつけられたもの。
ラファエロがフィレンツェに滞在していたわずかな期間に、その時(またはそれ以前に)街で活躍していた色々な芸術家の作品をしっかりと学習し、影響を受け、自分なりの画風を模索しながら描かれた作品です。
ラファエロ作品にしては珍しく真っ黒な背景は、恐らく本人の描いたものではなく、オリジナルには風景が描かれていたものに後世、破損を補修するため加筆されたものと考えられています。
『ヴェールの貴婦人』(パラティーナ美術館所蔵)
ヴェールをまとった上品な女性。でも、この女性が誰なのか、というのはわかっていません。作品が描かれたのはフィレンツェ滞在後、ローマに移ってからの時期。
16世紀の美術史家ヴァザーリは、ラファエロが死ぬまで愛した女性マルゲリータ・ルーティ(他のラファエロ作品『ラ・フォルナリーナ』のモデルとなった女性)を描いたものであると述べていますが、彼女の身に着けている絹の衣装やジェリーが大変に豪華なことから、誰か注文主の依頼を受けて描かれた貴族階級の女性であるとする説が現在は有力です。
綺麗な絹織物のドレスの他、ヴェールの下に一部が見えているパール・ルビー・サファイアを組み合わせた髪飾りや琥珀の首飾り、そしてこの女性のバラ色の美しい肌の表現なども見どころです。
が貸し出されます。
『聖セシリアの法悦』(ボローニャ絵画館所蔵)
この作品はラファエロと助手たちによる合作で、ボローニャの貴族エレナ・ドゥッリョーニにより絵のテーマでもある聖女セシリアに捧げられた礼拝堂のために注文されたもの。
ナポレオンの統治下にあった1798年にはパリに持ち去られ、その際にルーブル美術館の技術により板絵からキャンバスに移行されました。1815年、ナポレオンの統治終了とともにイタリアに戻ってきました。
テーマである聖女セシリアは絵の中心に立つ女性。音楽の守護聖人でもあるので手にはオルガンの一種、足元には楽器が描かれ、天からの天使たちによる清らかなコーラスを見上げて法悦に浸っています。
周囲を取り囲むのは聖パオロ、福音書記者ヨハネ、聖アゴスティーノ、マグダラのマリアの4人の聖人たち。背景には遠い丘の上に教会も描いてあって、恐らくボローニャのサンタ・マリア・デル・モンテ教会だと考えられています。
『アルバの聖母』(ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵)
ラファエロがローマに行ってすぐの頃に描かれた作品と考えられています。
その後、17世紀には持ち主によりスペインへ持ち去られ、さらに18世紀になってからマドリッドのアルバ公爵のコレクションにあったとの記録からこの名前で呼ばれるようになりました。
1836年、ロシアのニコライ1世が購入し、エルミタージュ美術館のコレクションの一部に。さらに約1世紀後、ロシアの財政難のためこっそりと売りに出されたこの作品、アメリカ人コレクターアンドリュー・W・メロンが他のたくさんの美術品とともに購入しました。エルミタージュの所有だった時代にもとの板絵からキャンバスへ移し替える作業が行われ、その際に画面中央と右側にできた損傷が確認できます。
『バルダッサーレ・カスティリオーネの肖像』(ルーブル美術館所蔵)
肖像画のモデルのバルダッサーレ・カスティリオーネは、ラファエロと同時代に生きた人文主義者・外交官・作家。著書『宮廷人』はヨーロッパ上流階級の人々にとって模範的な衣装・振る舞いを指南する書として長く支持されました。ローマの教皇領への外交官としてバルダッサーレが滞在していた時期にラファエロと親交を深め、この肖像画を頼んだと考えられています。
この作品はオランダ、スペイン、フランスと旅をして、最後にルーブル美術館の所蔵に。あのレオナルド・ダ・ヴィンチ作『モナ・リザ』が盗難にあった1911年には代わりにその場所に展示されていたとか。
ルーベンス、レンブラントなど後世の画家によってたくさんコピーも作られました。
肖像画の中のバルダッサーレは流行に乗った「オシャレ」さん。黒いジャケットに白いシャツ、毛皮のついた袖となんだか派手な、流行りの切込みの入った帽子をかぶっています。
『友人といる自画像』(ルーブル美術館所蔵)
描かれた二人の人物のうち、向かって左後ろにいるのがラファエロの自画像。描いたのは35歳~37歳頃、亡くなる少し前の時期と考えられています。手前の人物については誰を描いたのか、よくわかっていませんが、肩に手を置くラファエロ自身の仕草から弟子のひとり(ジュリオ・ロマーノ?)と解釈されています。
他に、友人のひとりであるとか依頼主であるとか、色々な説が挙げられています。
『バラの聖母』(プラド美術館所蔵)
この作品は1667年、マドリッドのエル・エスコリアル修道院にあったという記録以前の詳しいことはわかっていません。
描かれているのは右手のイエスを抱く聖母マリアと、幼子洗礼者ヨハネ、そしてマリアの夫であるヨセフです。2人の子どもたちが手にしている(取り合いしている?)紙片には「Agnus Dei(=神の子羊)」と書かれています。
タイトル「バラの聖母」は画面下部に描かれた板の上にあるバラからとられていますが、現存するコピーの多くにこれらが描かれていないため、この部分は後世の加筆である、とするのが現在の主流です。
ラファエロ作といいつつ、この作品の大半の部分は工房作で、恐らくジュリオ・ロマーノまたはジョヴァンフランチェスコ・ペンニの手になるものと考えられています。
他のラファエロ作品は「ラファエロの代表的な有名絵画作品21選」もご参考に!
ラファエロ展「RAFFAELLO」の予習におすすめ
ラファエロの作品はとても美しく、その豊かな色彩表現からも十分に眺めるだけでも楽しむことができます。
でも、せっかく見に行く!と決めたなら、前知識なしで見るよりも芸術家の人となりを知って鑑賞したり、時代背景を知って鑑賞するとより深く楽しむことができますよ。
美術鑑賞の初心者でもおすすめの読みやすい本をご紹介します。
池上英洋著・『もっと知りたいラファエッロ-生涯と作品』
イタリア美術といえばこの人、という著名な美術史家である池上英洋先生による入門書ともいうべき内容で、ページ数は少ないながらもカラーで主要作品をしっかり押さえてあるため、とても理解しやすいです。
ヤマザキマリ著・『ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論』
日本でもテレビ出演などでおなじみ、『テルマエ・ロマエ』作者でもある漫画家のヤマザキマリ先生による著書。
美術を専門に勉強した人ならではの目線でルネサンスの三大巨匠(レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ)を中心に紹介する内容。かなり著者の個人的主観に基づく評価も記載があるけれど、それもまた参考になってよし!
壺屋めり著・『ルネサンスの世渡り術』
16世紀美術史家ヴァザーリを専門とする研究者の壺屋めり先生によるイラスト&ミニ漫画つき解説書。
ラファエロが主役となった章はありませんが、そのライバルであったミケランジェロが彼といかに戦ったのかというエピソードや、その他同じ時代を生きた個性豊かな芸術家たちが面白おかしく紹介してあり、一読の価値あり!
魅力たっぷりのラファエロの世界を、しっかり堪能してくださいね!!