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アカデミア美術館で出会える音楽史。ピアノの発明はフィレンツェだった!

アントン・ドメニコ・ガッビアーニ, 1685頃? パラティーナ美術館(現在アカデミア美術館に貸出中), フィレンツェ

フィレンツェのアカデミア美術館と言えば、ダヴィデくん

…ですが、実はアカデミア美術館には、知られざる超・貴重なコレクションが他にもずらりと並べられているのです!

それは、ヨーロッパで近代発展した音楽の歴史にはなくてはならなかったもの。

せっかく入るなら、見ないと損!!(*´ω`*) 今日はそのほんの一部をご紹介します。

アカデミア美術館に集められた貴重な楽器コレクション

アカデミア美術館はこんな形をしています。

pianta-dellaccademia

もともと、修道院と病院だった建物を複合してひとつの建物にしたので、ちょっと複雑ですね。

ほとんどの人は入り口を入ってすぐの宗教画の部屋(1)をササっと見た後、本命ダヴィデくん(4)へ一目散!

…なんですが、実はここを右手(2の部屋)へ行くと、別の展示スペースが!!

ここにあるのは非常に貴重な楽器のコレクション。

イタリア人ガイドマーク先輩

ここにはなんと、あのストラディバリウスが展示されているんだ!!

旅好きナナミちゃん

ストラディバリ…聞いたことがあるような、ないような…

イタリア人ガイドマーク先輩

ストラディバリウスというのは世界最高と称される、超有名な楽器(主にバイオリン)なんだ!!OK?

知る人ぞ知る(いや、結構有名かも?)ストラディバリウス(「ストラド」とも)とは。

ストラディバリウスは、イタリアのストラディバリ父子3人(父アントニオ、子フランチェスコ、オモボノ)が製作した弦楽器のこと。特にアントニオ・ストラディバリが17世紀~18世紀にかけて製作した弦楽器が有名である。なお、通常「ストラディバリウス」といった場合は楽器を、「ストラディバリ」といった場合は楽器製作者を指す。 ストラディバリの製作した弦楽器には、18世紀の法令に基づきラテン語にてAntonius Stradivarius Cremonensis(アントニウス・ストラディウァリウス・クレモネンシス)というラベル(クレモナのアントニオ・ストラディバリ作、の意)が貼られている。ここから、彼(ら)の手による弦楽器は「ストラディバリウス」あるいは省略して「ストラド」と呼ばれる。

-wikipedia「ストラディバリウス」より引用

ストラディバリ父子はヴァイオリンの他ヴィオラやチェロなどたくさんの楽器を製作しましたが、現存するものは約600挺とされ、一挺数億円~というとんでもない価格で取引されています。


参考
ストラディバリウス12億円で売却 収益金で被災地支援へasahi.com

日本では、バイオリニストの高嶋ちさ子さん2億円で購入したと話題になりました。

Azu

そして最近ではあの話題の人、ZOZOタウンの前澤社長が購入したと!噂ではお値段10億円ほどとか…??

そんな貴重なヴァイオリンが、フィレンツェに…あるんです!!

しかも一挺じゃなくて。

さらにさらに、メディチ家の紋章入りも!!

ストラディヴァリのヴィオラ アカデミア美術館
メディチ紋章 アカデミア美術館

旅好きナナミちゃん

もうここまでくると売ったらいくらとかいうレベルではないんだろうけど、でも普通のストラディバリが12億円なら、これは一体いかほど…って考えちゃうね~!

ここには他にも、貴重なコレクションがたくさん。

例えば1650年ニコロ・アマティ(Nicolò Amati / 1596-1684 )作のヴィオラ。

イタリア人ガイドマーク先輩

アマティはストラディバリの師匠だよ!

17世紀以降のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、古いチェンバロやピアノなど。

その他、19世紀の基本的な楽器が一そろい。

音楽に心得のある人なら見逃せない、そうでなくても貴重なヴァイオリン、値段もそうですがその姿かたちの美しさは一見に値します。

Azu

このハーディ・ガーディ(英:Hurdy-gurdy / 伊:ghirondaギロンダ)って面白いですよ!

左上が完成形、部品を取り外して中身が見えるようになっているのが右下。

旅好きナナミちゃん

ハーディ・ガーディって初めて聞いた!!

木の半円形の部分が回転して弦をすることで音を出すもので、それはハンドルを回して回転させるのでいわば機械式のギターです。

起源は11世紀以前にさかのぼる古い楽器で、メロディは本体についている鍵盤で出すようです。

↓実際の演奏風景はこんな感じ♪ とても懐かしい感じの音がします。

フィレンツェの音楽の歴史

旅好きナナミちゃん

でもなんでフィレンツェのアカデミア美術館にはこんなに楽器が集められたの?

そのわけは、この人。

グランプリンチペ・フェルディナンド

"

上の絵の中の右から2番目にいる、豪華な服を着た人物。

この人はメディチ家のコジモ3世の長男、グランプリンチペ・フェルディナンド(Granprincipe Ferdinando / 1663-1713 )です。

グランプリンチペ・フェルディナンド (1663-1713)

グランプリンチペ・フェルディナンド (1663-1713)

この人は跡継ぎ公太子(グランプリンチペ/Granprincipe)として育てられたものの、父コジモ3世よりも先に亡くなってしまいました。

イタリア人ガイドマーク先輩

といってもコジモ3世は当時としては長生きの81歳、フェルディナンドが亡くなったのは50歳のとき!若すぎた死ということでもないが、しかし亡くなった理由は遊びすぎ?による梅毒とされているんだ!

メディチ家のメンバーは、絵画・彫刻・詩・建築・輝石細工、…などなど、興味の対象は個人によって違いましたが、ほぼ全員が芸術への造詣が深く、様々なものを熱心に集めました

グランプリンチペ・フェルディナンドも例外ではなく、彼の主な興味の対象は音楽と楽器、それと絵画にありました。

彼は政治にはまったく興味がなく、また狂信的ともいえるほどの父と祖母に反抗して、春はポッジョ・ア・カイアーノ、秋はプラトリーノ(現ヴィッラ・デミドフ)の別荘でお気に入りの音楽家たちを集めて過ごすことを好みました。

このプラトリーノの別荘には室内劇場があり、彼はそこでに多くの音楽家を招いて度々オペラを上演し、この劇場はイタリア、またヨーロッパ中で話題になります。

彼に招かれた音楽家のうちの一人、パドヴァ出身のバルトロメオ・クリストフォロ(Bartolomeo Cristoforo / 1655-1731 )は、1688年からメディチ家の宮廷に入り、1700年頃にピアノを発明します。

旅好きナナミちゃん

ピアノってそんなに最近の楽器なんだね!!

そう、意外と最近ですよね。

ハープとかリュート、笛などは古代神話の登場人物も使ったりしているけど、そういわれれば「ピアノを弾いている少年」みたいな絵は新しく感じますよね。

ピアノ以前に似た楽器としてはチェンバロが既に14~15世紀頃からありました。

 ピアノとチェンバロの違いを体感できる装置

ピアノとチェンバロの違いを体感できる装置

上の写真は左がチェンバロの模型、右がピアノの模型。

これは実際に叩いて音を出してみるとその違いがよくわかりますが、チェンバロはギターのように弦をはじいて音を出す構造のため、いったん出した音を途中で止めることができません(ギターも弦を抑えないと音は止まりませんよね)。また、音の強弱をつけて演奏することもできません

イタリア人ガイドマーク先輩

これがピアノが発明される理由のひとつとなったんだ!

ピアノは鍵盤をたたく強さを調節することで、弱い音(ピアノ/piano)強い音(フォルテ/forte)を表現でき、また鍵盤を放すと音が止む、という構造になりました。

イタリア人ガイドマーク先輩

ちなみにイタリア語では楽器のピアノのことは「pianoforteピアノフォルテ」と呼ぶんだよ!

↓チェンバロを演奏するとこんな音です♪

そして、アカデミア美術館には確認されている世界最古の縦型ピアノが展示されています。

世界初の縦型ピアノ

世界最古の縦型ピアノ

世界最古の縦型ピアノ

この楽器は、ドメニコ・デル・メーラという、聖職者で小学校の先生だった人が発明しました。

彼は本職とは別に趣味の一環で楽器を作っていたようで、1739年にこの縦型ピアノを開発します。小さなスペースでも置けるように工夫されたもので、縦型チェンバロが既にクリストフォロによって発明されていたので、恐らくそれにヒントを得たのだろうと言われています。

イタリア人ガイドマーク先輩

一説によると、このドメニコ・デル・メーラはクリストフォロのアシスタントをしていたらしい!

そして、最初の写真の中に有名人がもう一人。

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル

バロック時代の重要音楽家、ヘンデル(Georg Friedrich Händel /1685-1759 )。有名な「ハレルヤ」の作曲者です。

彼も若い頃、グランプリンチペ・フェルディナンドのプラトリーノの別荘に出入りし、多くのオペラや音楽を学び吸収したのです。

個人的には、ヘンデルの作品ならこちらのアリア「Lascia Ch’io Piangaラッシャ・キオ・ピアンガ(私を泣かせてください)」 が好き。

Azu

実は中学のとき、コーラス部だったので、この曲をよく練習したんです(*´ω`*)

ちなみにこの動画、ちょうどヘンデルの活躍した時代が舞台の、映画「カストラート(伊:Farinelliファリネッリ」という作品。

この時代は女性がオペラの舞台に立つことが認められておらず、その代わりに美声を持つ男性で補っていたとされています。その美声を持つ男性を得るために、幼いころから才能のある男の子を去勢したのだとか…そういった存在が「カストラート」。もちろん現代はそんなことはしません。

だから本来、このアリアは女性歌手が歌うものですが、動画を探していて見つけたこれがあまりにも美しかったもので選んでしまいました…(;・∀・)

そしてロレーナ家へ

フェルディナンドの弟でメディチ家最後の大公、ジャン・ガストーネの死後、その血筋は途絶えます。

トスカーナはオーストリアの女帝マリア・テレジアの夫であるフランツ1世のロレーナ家が支配することになります。

ロレーナ家も、同様に音楽への理解を示し、多くの楽器がコレクションされました。

それらは主に打楽器で、現在のものとほぼ同じ形をしています。

打楽器

管楽器

管楽器

旅好きナナミちゃん

小学校とか中学校のブラスバンドでよくあるやつだね!!

現代に伝わる偉大な音楽家たち

そうしてこの時代以降、ヨーロッパ全体で音楽業界が発展しました。

有名な音楽家、バッハ、ヘンデル、ハイドン、モーツァルトなどはこの時代の人々です。

クリストフォロのピアノの発明がなければ、またこの歴史も変わっていたかもしれません。

旅好きナナミちゃん

この発明は音楽の歴史の中で重要な役割を果たしたんだね!

アモーレ、マンジャーレ、カンターレと表現されるイタリア人気質。

料理男子のポールくん

アモーレ(amore)=愛する、マンジャーレ(mangiare)=食べる、カンターレ(cantare)=歌う、この3つはイタリア人にとっては最も重要な3大動詞でーす

現代のトスカーナ出身の音楽家はこんな人たちがいます。

オペラ歌手からポップス歌手へ:アンドレア・ボチェッリ(Andrea Bocelli)

現在は主にポップス歌手として、またテノール歌手としても活躍。

小さい頃の事故がもとで全盲となってしまいましたが、その深みのある美しい歌声は多くの人を魅了しています。

ちなみにこちらの曲、日本では「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」として知られていますが、もとは彼のために作られた曲でイタリア語では「Con te partiròコン・テ・パルティロ:君と旅立とう」というタイトル。

どちらかというとサヨナラではなく、出発の意味ですね。

魅惑のハスキーボイス:ジャンナ・ナンニーニ(Gianna Nannini)

シエナ出身のロック歌手で、現在も活躍中。素敵なハスキーボイスで歌う方ですね!

実家はシエナで超有名な名門のお菓子屋さん!

さすがに老舗だけあって、美味しかったですよ(*´ω`*)

ダヴィデ像 ミケランジェロ・ブォナローティ, 1501-1504 アカデミア美術館, フィレンツェ アカデミア美術館

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